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福武コレクション 国吉康雄作品寄託記念展
柳沢秀行[大原美術館]

 
福岡/川浪千鶴
神戸/木ノ下智恵子
東京/南雄介
倉敷/柳沢秀行
国吉康雄作品寄託記念展
福武コレクション 国吉康雄作品寄託記念展
 これまで岡山市内にあるベネッセコーポレーション本社社屋内で、国吉康雄美術館として公開展示されていたコレクションの全作品が、このたび岡山県立美術館に一括寄託され、そのお披露目展である。
 このコレクションは、現在同社代表取締役会長を務める福武総一郎氏を中心に形成されてきたが、その全てを会社より福武氏個人が引き受けた上での寄託となった。
 内容は、油彩画42点、ドローイング96点、習作59点、版画95点、写真196点、さらにこれらに画材などの遺品を合わせると、計570点にものぼる膨大なもの。
 これまでの国吉康雄美術館は、土日は入場不可の本社社屋内にあり、それに作品数に対して必ずしも十分な広さが確保できなかったこともあって、その素晴らしいコレクションに比して、年間入場者数が1万人にも満たないこともあった。
 福武氏の側からすれば、大切な存在としてこれまで作品収集を続け、また会社の資産を、個人として引き受けるからには、まあ市場実勢価格よりは割安としても、かなりの出費もあったであろうが、なにより作品のため、そしてこれまでの、そしてこれからの数多くの国吉ファンにとっては、すばらしい決断であったと思う。
 また引き受ける岡山県立美術館にしてみれば、これは願ってもないこと。
これまで『夜明けが来る』『祭りは終わった』といった代表作を含め4点の油彩画を所蔵してきたが、これだけの作品がまとまって寄託されれば、もう何も言うことはない。
 すでに、やはり地元企業から国吉康雄の版画作品の大半の寄託も受けているから、今後、岡山県美が管理する国吉作品だけで、常に最上質で量的にもそろった国吉康雄展が開催できるだけのストックを持ったといえる。逆の言い方をすれば、今後、国吉に関わる企画展示が開催されるには、岡山県美はかならずキー館とならざるを得ないこととなる。
 館の考え方によっては、「この作家は、もうこれだけ作品があるのだから、もうこれ以上収蔵する必要はない」といったところもあるだろう。
 ただ私自身も、岡山県美在職中に、すでに55点もの作品が収蔵されていた中山巍を、さらに調査を続ける中で10点以上を寄贈という形でコレクションに加えるという経験を持つ。
 そうした活動の中で、これまで詳細を突き止めることが出来なかった中山作品の加筆状況を見極めることが出来て、すでに収蔵していた作品を相対的に研究する糸口がつかめ、また諦めていた1928年の帰国直後の作品を発見、収蔵することにより、中山による日本的油絵の探求についてまとめて考察することが出来た。
 今回の福武コレクション寄託は、そうした比較には及ばないほど質量ともにものすごい出来事であるが、こうして、作品たちが一堂に会することは、観客への利便のみならず、研究者にとっても実に魅力的なことで、この会期中、多くの美術史研究者が同展を訪問している。
 私自身も、すでに3度展示を訪れたが、1度目は改めて展示室の空間によって作品の表情が変わることに驚かされ、そして2度目は作品個々の比較検討に時間を費やした。
 またそうした分析的な視点だけではなく、今回の手際のよい展示からは、改めてアメリカという国で第2次大戦下を過ごした日本人としての国吉の存在の複雑さが浮かび上がってくる。やはりそれは福武コレクションの各年代の代表作のうえに、岡山県美所蔵品が重なってのことであろう。もしかしたら、それは、この戦時下の世界の中で、日本という国、アメリカという国のことを考えることにつながるかもしれないと思いつつ、やはり展示場で長い時を過ごした。
会期と内容
●福武コレクション 国吉康雄作品寄託記念展
会期:2003年4月15日(火)〜6月15日(日)
会場:岡山県立美術館
問い合わせ先:Tel.(086)225-4800
       Fax.(086)224-0648
       URL
http://www.pref.okayama.jp/seikatsu/kenbi/kenbi.htm

  
学芸員レポート

大原美術館では、今から夏の間だけで、これだけ展示型のイベントがあります。
それから、同じペースで、秋から冬も詰まっています。
状況はお察しください。

開催中〜11/3(月・祝) 音・竹水の閑― 眞板雅文展
7/4(金)〜7/7(月) くらしき・花七夕(眞板氏デザインの笹飾りが倉敷美観地区を埋めます)
8/2(土)〜9/15(月・祝) イ・ブル 世界の舞台 展
8/8(金)〜11/3(月・祝) 生誕100年記念 棟方志功展(分館)
8/19(火)〜9/28(日)千葉市美術館にて、大原美術館所蔵名品展
8/23(土)、24(日) チルドレンズアートミュージアム(本館・分館)

でも、岡山、倉敷のアートシーンだけは見逃さないようにしています。


[やなぎさわ ひでゆき]

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