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「ヒーローズ 〜昭和のイラスト・特撮の世界〜」展
高松/毛利義嗣[高松市歴史資料館]

 
札幌/吉崎元章
福島/木戸英行
東京/増田玲
高松/毛利義嗣

 今回は、私のところの館でやる展覧会の予告です。タイトルだけだと、テレビ番組やマンガの有名なキャラクターが勢ぞろいという印象があるかもしれませんが、実際にそういうのも出るんですが、全体的にはもうちょっと渋いかもです。昭和といっても第2次大戦後、昭和20年代から50年代頃にかけて、絵本や雑誌、映画、テレビといったメディアを舞台に作られた、SF的なあるいはファンタジックなイメージを、それらの制作者の側に少し近寄って見てみましょう、という感じでしょうか。
 で、具体的には、小松崎茂、成田亨、井上泰幸、坂野義光、といった方々の作品や資料が中心になります。何というか、皆さんご高名なんですが、見る人の世代とか興味によって、知ってる知らないがかなり違うかもしれません。
 小松崎茂さんは2年前に亡くなったんですが、戦前から新聞などの挿絵の仕事を始め、昭和24年頃から、少年向きの雑誌に掲載された「絵物語」という形式の作品で大ヒットをとばした作家です。絵本と劇画の中間のようなスタイルで、タイトルをあげると『地球SOS』とか『宇宙王子』とか。それと膨大な量の口絵、皆さんたぶん必ず見てると思います。近未来の日本のすがたとか想像上の乗り物とか宇宙開発、あるいは軍事物、歴史もの。あらためて見ると激しくなつかしかったりするのですが、実はこれは今でも少年誌に、マンガ雑誌ではなく学習誌というんでしょうか、「小学何年生」とか「TVくん」のような雑誌のスタイルの中にずっと受け継がれてもいるわけです。ものごころついた子供が身近なものとして初めて所有する絵・図像というのは、最近ではゲームとかコミックの中のそれであることが多いのかもしれませんが、小松崎さんの作品は昭和の中期にはそういうものとして愛玩される役割を担っていたでしょう。それは時代を象徴するイメージであり、また時代が求めた幻想/世界観であったのだと思います。 
 成田亨さんも、昨年亡くなりました。近年は美術館で作品が展示される機会もあり、ウルトラマンやウルトラセブン、そして何より多くの怪獣たちの生みの親として知っている人も多いですよね。昨年、遺された作品の多くが、幼少の一時期に過ごした青森県の所蔵になり、今年のうちに回顧展も開かれると聞いています。今でも怪獣や怪人、毎週現われては消えていきますが、初期の怪獣というのは存在自体がもっとこう、重みがあったのではないでしょうかね。怖かったし、悲しかったし、残酷だった。娯楽番組として消費されるものではあったとしても、確かにあの時代あの社会に、生まれるべくして生まれた異形の何かだったように思われます。
 坂野義光さん。黒澤明監督の4本の映画で助監督をつとめ、昭和46年の『ゴジラ対ヘドラ』でデビューした映画監督・映像プロデューサーです。この『ゴジラ対ヘドラ』、過度におどろおどろしいヘドラの造形、飛行するゴジラ、作中のサイケな美術、ばたばたとリアルに死んでいく人々、など、ゴジラシリーズの中ではかなり異色な作品として知られています。坂野さんは大阪万博三菱未来館の映像・音響を演出した人でもあり、昭和40年代といいましょうか70年代といいましょうか、当時の社会の臭いを濃厚に感じさせるようなお仕事をされてます。今回は、ゴジラ関係の資料に加えて、近年に制作した映像作品も紹介する予定です。
 井上泰幸(たいこう)さんは、上記の『ゴジラ対ヘドラ』も含めて、数多くの特撮美術を手がけてきた人です。兵役後、東宝入社して『ゴジラ』の第1作目から特殊美術に携わり、また『ウルトラQ』を始めとして多くの円谷作品に参加しています。71年には独立して「α企画」を設立、特殊美術のエキスパートとして長く日本の特撮技術を支えてきました。先日、展覧会のことで坂野さんといっしょにお宅におじゃましたのですが、ヘドラの幼生が水中で合体するシーンは、模型でなくて生きたドジョウにかぶり物を着けて泳がせて撮ったとか、東宝を辞めたいきさつとか、まあ貴重なお話をいろいろと聞かせていただいたものです。今回は、映画のためのイメージボードやデッサンなどを展示します。
 ということで簡単に紹介しましたが、他にも様々な雑誌とか原画とか雑多に展示することになるはずです。上にあげた4名の作家はそれぞれ自分の名前を出して活動されていますが、そうではなく、工房としてあるいは職人的仕事として描かれたモノがたくさんあって、例えば、幼児用のかばんにプリントされるキャラクターの絵、あれは原作者が描くわけでも自然現象で現われたものでもなく、描いた人がいるわけです。あるいはプラモデルや玩具の箱の絵とか。そうした、匿名的に流通し、しかしとてつもなく広く浸透しているイメージの作り手たち、そんな所にも少し焦点を当ててみるつもりです。

会期と内容
●「ヒーローズ 〜昭和のイラスト・特撮の世界〜」展
会期:2003年7月19日-9月15日
会場:高松市歴史資料館(香川県高松市昭和町1-2-20 tel.087-861-4520)

[もうり よしつぐ]

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