岡本太郎と東日本大震災の話はいったんおいて、「地域づくりとスポーツ」というテーマを掲げた理由を説明します。
私は、何らかの言語化可能なルールが定められた状況で、人同士が競いあって、競技者や観客が偶発性を楽しむのがスポーツだと思います。さらに、地域を超えて人気のあるスポーツは、他の地域との交流を生みます。さらに大規模/広域的に行われるプロスポーツは、必ず選手たちの移動と、その土地でのアマチュアスポーツの振興を伴います。こうしたプロスポーツの仕組みによって、ある土地の誇りや隣の土地との違いも意識されるようになります。
こうしたプロスポーツの仕組みは、誰が誰に向けて行うのか明確でないことも多い「文化の発信」のような事業に含まれることが増えてきた芸術・文化の領域と密接に関係しつつ、地域づくりにとって相互補完的な役割を果たしていると私は考えています。
ところで、芸術・文化の領域では、領域の固有性が強調されます。それどころか、「その領域」などといって抽象的に扱おうとすると、それだけで「その領域」の関係者から反発を受けることもよくあります。例えば「美術館では」などといって美術館一般の問題を扱おうとしても、「美術館は全部一つ一つ違う事情を抱えているのに、一緒に扱おうとする時点で、あなたの話は信用できない」と口にする関係者も少なくないのです。スポーツにおいてもそうした傾向がないわけではありませんが、しかし私の知る限りではスポーツ、とりわけアマチュアの裾野が広い競技においては、芸術・文化に比べるとアレルギーは少ないように感じます。
近年、企業が地域密着を掲げていく際に、プロスポーツを支援していくことが増えてきました。芸術・文化よりもそのスピードは早いのではないかと思います。