こんにちは
前回は昨年参入者が多かった共同購入型サービスをはじめ、「一定数の(購入)意志が集まることで実現できるサービス」についてご紹介しました。その中でも数年前から注目されているクリエイターのための資金調達サービスKICKSTARTERについて触れましたが、日本でも、これと同様のパトロン系サービスが、今年に入ってリリース(や、リリース予定の発表)されています。今回は簡単にこれらのサービスについて見ていきたいと思います。
現在この3つのサービスが、日本の資金調達サービス・パトロン系サービスとして登場しており、これらの方式を大きく分けると、KICSTARTER方式と投げ銭方式の2つあります。
KICKSTARTER方式は、前回でご説明したとおり、何かしらの対価をプロジェクト運営者が準備し、それに対して寄付ではなく購入してもらう形で資金調達を行うものです。もし目標金額に達しない場合は資金が出資者に返却されます(All or Nothing)。この方式はKICKSTARTERによって認知されたため、便宜上KICKSTARTER方式としています。
一方で投げ銭形式は、プロジェクト運営者が特に目標金額を設定することなく、募金のような形で出資される仕組みです。
この2つの方式をギャラリーの運営に当てはめるのであれば、KICKSTARTER形式はどちらかと言えば「友の会」的な出資であり、投げ銭形式は「募金箱」的な出資と捉えられることもできます。
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オーマ株式会社が運営する「READYFOR?」は3サービスのなかで唯一正式リリースされているものです。
2010年12月に、日本テレビ系列で「たけしとひとし」という番組が放送されました。この番組の内容は、一般の方が日本を面白くするプロジェクトとしてビートたけしさん、松本人志さんにプレゼンを行い、そのプロジェクトに対して出資を募るというもので、この出資システムとして使われていたのが、このREADYFOR?でした。その後正式サービスを行い、現在は30万程度のプロジェクトがゴールしています(ちなみに番組内のプロジェクト提案者としてChim↑Pomさんも登場していました)。
READYFOR?は、KICKSTARTER方式をとっており、仕組みとしてはほぼ同じもののようです。ただしKICKSTARTERの対象が「クリエイティブなプロジェクト」にフォーカスしているのに対し、READYFOR?は「実行者を支援する」とあり、テレビとの連動などからも、サービスの対象者はより広いものであることが伺えます。
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3サービスの中で、Grow!は唯一投げ銭方式を取っています。Grow!は、Grow!ポイントと呼ばれるポイントを出資者が100pt=1$で事前購入し、Growボタンが貼られたサイトに対して、このポイントを使って出資することができる仕組みです。集まったGrow!ポイントは現金に換金することができますが、このときにGrow!への利用料が発生します。この手数料は現在、Paypalへの決済手数料を含めて、ポイントの35%に設定されていますが、今後の収益によりこの利用料を低減するよう目指しているようです。他の3サービスがそのサービス上にプロジェクトを登録し資金調達を行うのに対し、ブログやウェブサイトなどにGrow!ボタンを設置すれば、ライトに資金調達を行うことができます。先ほどのギャラリーの例で言えば、ギャラリーのサイトにこのボタンを設置すれば、投げ銭をもらえる可能性があるということです。
このような投げ銭の仕組みは、はてなダイアリーのポイントの送信機能など、以前からもありましたが、いまは普及には至っていません。この理由はいくつか考えられますが、「手続きが面倒」というところが大きいようです。しかしはてなの取り組みは2005年頃でしたので、Grow!が現在の状況に沿う形でどのように設計するのか、とても注目されるところです。
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CAMPFIREはリリース準備中であり、現在ティザーサイトのみで正式な情報はありませんが、対象が「すべてのクリエイターに贈る」というところからも、KICKSTARTERとかなり近いものになるのではないかと予想されます。また運営を行う株式会社ハイパーインターネッツには、SUNDAY ISSUEなどのギャラリーを運営しているpaperboy&co.創業者の家入一真さんが参加されています。
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参考:JustGiving
上記3サービスと異なりますが、最終的な出資先がNPOとなり、個人が寄付を行うサービスもあります。JustGivingは、個人がNPOに対して直接寄付をするのではなく、間に「チャレンジャー」と呼ばれる募金を集める人が何かしらのチャレンジを行い、それに対して個人が寄付を行い、チャレンジャーがNPOに寄付なり何かしらのアクションを行うというサービスです。今回の震災時には堀江貴文さんもチャレンジャーとして参加し、多くの寄付金を集めました。
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まだ正式リリースに至ってないものもありますが、文化に対してお金を伴った意志を集めることができるサービスが日本でも増えてきています。次回はこのようなパトロン制サービスがなぜいまの時代に増えてきたのかを考えてみたいと思います。