作品と制作費

こんにちは

前回は今年に入り増えている日本のパトロン系サービスをご紹介しました。今回はなぜこのようなサービスが増えているのかについて、です。

これを考える前に、ひとまず作品や商品と制作費の関係について考えてみます。

pattern1

まったくの専門外なので予想でしかありませんが、作品や商品が発表されるまでの過程を、発案→制作→発表とし、最終的にユーザが受容するとシンプルに捉えてみます。黒丸は誰が主に担当するかを表しています。たとえば音楽作品の制作であれば、アーティストがこういう音楽を作りたいというアイデアを持ち、レコーディングや原盤作成などの制作を経て、その音源を発表(流通)し、ユーザが聴くということです。

PCで音源を作り、ネットで公開するなど、この過程でまったくお金がかからなければ、とてもシンプルなのですが、実際はそうではありません。制作や発表にお金がかかる場合、それをどこからか調達しなければいけないからです。

pattern2

先の音楽の例で言えば、スタジオでレコーディングしたり、ミキシングのできる人を連れてきたり、プロモーションをしたり。いまでこそ情報技術の進化で制作や発表のコストが下がってきたものの、いまだお金が必要なケースも少なくありません。資金調達のフェーズは制作前と発表前の2度になるかもしれませんが、ここでは制作前に資金調達があるとしてみます。

この資金を制作者(アーティスト)が賄う場合、言わば自主制作のようなケースでは特に何も気にするものはありません。しかし第三者(レコード会社)から資金を調達する場合、作品制作はすこし複雑なものになります。なぜならその出資を行うかどうかは、当然彼らの意志で決まるからです。

pattern3

この時の意志決定の基準は、大まかに言って「目的に合致した出資であるか」です。たとえば資金を提供するのが企業であれば営利目的が大体だと思います。その場合、その発案が売れそうかどうかでで意志決定がなされるということになります。また企業がメセナ的な目的で意志決定を行う場合も当然ありえます。しかし、それが営利でも芸術活動支援でも、第三者の価値基準によって「目的に合致した出資であるか」かどうかを判断されることには変わりません。このことが、制作者の制作にも影響を与え、当初の発案から離れたものを制作するというケースもあるでしょう。

では企業が営利目的でその出資を行うかどうか判断する場合、何があればすんなりと意志決定してくれるでしょうか。大体の新しいものは、受けいれられるか・売れるかどうかわからないものです。しかし、確実に売れるという確約があれば出資しない手はありません。

前々回に「一定数の(購入)意志が集まることで実現できるサービス」群を見てきました。復刊ドットコムでは、絶版本をいま復刊したらおよそどれくらい売れるのか、出版社が知ることができます。それは制作前の発案に対して、ユーザが意志を表明できるからです。

さらに言えば、事前に意志がお金とともに集められた場合はどうでしょうか。次回につづきます。

ブロガー:小林賢司
2011年5月30日 / 02:35

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

現在、コメントフォームは閉鎖中です。