5月3日に料理とプログラミングという、共通点がなさそうなこの2つの分野について話すレクチャーを開催しました。
レクチャーを担当してくれたのは、 Graffiti Research Labが共同で開発する「EyeWriter」にも関わったプログラマーであり、料理のケータリングサービスを行うKeith Pasko (キース・パスコ)です。hanareのサイトにレクチャーの詳細をアップしてますが、ここでは個人的感想をざっくりと。
プログラマーの仕事の仕方を応用することで、レシピ等の料理の記述方法と、もう少し広い意味での食を取り巻く環境をより豊にできるのではないか、というのがレクチャーの趣旨。このテーマを考える時に、ソーシャルコーディング(Social Coding)という言葉が大事になってくる。それは、ある大きなプログラムを構築していく時に、多くのプログラマーがそれぞれの小さなパートに分かれて少しづつ書き足しながら、大きなプログラム完成させていく恊働的作業のことを指してます。個人的には、この共有をベースにした恊働の仕方に加え、プログラマーという人たちの反権力的な指向性も、キースの話を理解する上で実は重要なポイントではないかと思った。(日々使うアプリケーションを見渡した時、大企業が開発するめちゃくちゃ高いアプリケーションと、ほぼ同機能のフリーソフトウェアが常に開発され/改良され、利用者に無料で提供されてきた歴史が例として挙げられる。パソコン関係以外の生活必需品で、フリーで使えるものがあまりないことを考えると、この分野は突出している)ソーシャルコーディングという概念と、この反権力的な傾向を料理という枠に入れた時に、どんなことが見えてくるか?
カリスマシェフや料理研究家が書いたいたレシピを盲目的に従うのではなく、ある料理を作る時にどんな材料とどんな料理法が必要かを論理的に理解するために、レシピを解体し、小さなパーツに分けてみる→その小さなパーツを使って自分で実験を繰り返すことが可能になる→レシピのコアに地元地域にある食材や料理法が適用できないか試す→実験、応用したレシピを他の誰かに伝え、伝えられた他の誰かは、その人の地域の食材や調味料を応用し、また別のバリエーションを生み出していく→こうして、沢山の工夫が付け加えられたレシピの蓄積を、ネット上で、地域や文化を超えて迅速に共有していけないか?そういう話です。
今書いたことは、既にどんどん盛んになってきてることで、別段珍しいことではない。ただ、ポイントはこの既に行われているやり取りをより顕在化させることで、もっと楽しくなるんじゃないの?ってことと、より意識的な恊働作業を生み出していきたい!ってことにあるのだと思います。このレクチャーでは料理という分野に限定して語ってたけど、本人は農業にまで展開したいようなので、引き続きキースと共同しながらこのテーマを掘り下げていく予定。このソーシャルクッキングという考え方、更にいえばソーシャルイーティングというアイデアが、ネットを介した共同作業から日々のアクションとなる時、どんな形や仕組みが生まれるのか、考えてます。