――最初は絵画を勉強していたようだけど、地図という画面がキャンバスになったということでしょうか? 地図から読み取る場所は、仮想空間の広がりをはらんでいますが、その意味では、単純な平面というよりパースペクティヴを事前に持ち込んでるのかな。そういえば、最近出た本で『話を聞かない男、地図が読めない女』って流行ったけど、同感かな?
話はそれるけど、うちの母は私が子供の頃に、毎日毎日地図ばかり見ていたの。彼女にとってそれが、旅だったから。毎日、趣味もなく友人と遊びにいくわけでもない典型的な専業主婦である母は、いつか行ってみたいところを地図を見ながら想像してたのよね。だから、けっして行った場所の記憶を確認するといった実体験ではなくて、彼女のなかでは地図をめくる行為からヴァーチュアル・トリップを実現することが可能だったといえるかな。そのせいか、地名だけはやたら詳しい。
そうですね。私は地図の読み方も下手くそで、車のナビができません(笑)。地図の読めすぎない女……ってとこでしょうか?だから、仮想空間をはらんでいる、という表現はあたってると思いますよ。でも、パースペクティヴ、という感じでもないかなぁ? それも苦手だし(笑)。私は、かなり平面的に、地図を読み取ってる(解釈してる)と思います。地としてより図として、とらえてるのかも。
――旅は好きですか?旅に出かけると、創作意欲が湧いたり、創造的な発見とかあるでしょう? あまり、私は仕事と遊びという領域をくっきり分けて生活してないこともあって、旅といってもホリデイ気分になれることが少ないんだけど。旅に出ることは私にとって最適な活力源かな。旅行中には普段はどこに隠れているんだろうと思うエネルギーが出てきて、やたら活動的になりますね。
大好きです! いろいろなところを周り、いろんな場で、いろんな人に出会い、さまざまな味やにおいや色を感じて、五感でその土地を理解してゆき……。これは、とっても素晴らしいことだと思います。私も、お仕事と旅の区別は、あんまりつきません。私の場合、旅がお仕事なのかもしれませんしね。でも、これは、すごい幸せなことかも。これからも、いろんなところに、どんどんどんどん旅立ってゆきたい!
けど、旅に出ると、初めのうちは緊張してるんですが、その土地に慣れ親しむにつれ、いつもどおりの「ボケ」ぶりを発揮するようです。どうやら。
――これから行ってみたいところってある? 海外に住んでしまおうとかは思わない?
西洋(この言い方は、あんまり好きじゃないんですけど……)でのお仕事が続いたけれど、次はアジアなんかイイなと思います。同じ容姿の、食べ物も、文化も近く、文字も似ている、アジアのひとたちのなかで生活してみて、そこからなにが私の感覚のフィルターに取り込まれてゆくのか……を知りたい、見てみたい、と思う。
海外には、今のところ住んでしまおうとは思いません。それは、お仕事で海外にゆき、戻って来る度に日本が好きになっていくから。それまでは、ありきたりと思ってた自分の国のいろんなことが、すごい新鮮な角度から観れるようになっていくのが、楽しい。それで、また次の国へゆくパワーを日本で蓄えて外へ出てゆく、この今のリズムが好きです。でも、そうゆうお話がきたのなら、一時的にでも住んでみてもイイかな?とも思ってみたり。
――今後の予定を教えてください。モンフランカンでも展覧会が開かれるんですよね。どんな風な構想ですか?
モンフランカンでの構想は、ただ、ギャラリーに飾ってもつまらないので、村の、それぞれ、馴染みのお店(八百屋さんや、小さなスーパーマーケットや雑貨屋さんや、クリーニング屋さんなど)にも、そこの場と自分を結んだ作品を置かせてもらう予定です。いろんなひとに観てほしいと思うので。ギャラリーだと「さぁ、作品を観るぞ」って心構えで観られてしまうでしょう? ……じゃなくて、何気なくふっと入ったとこに作品があって、「なんだ、コレ?」って感じから始まる方が面白い気がするのです。
東京のほうも、なるべくモンフランカンらしい「あったかい」空気が生み出せる空間を創りたいと思ってます。過去の、相模大野、ストックホルム、NYの作品たちも展示して、一連の流れから、モンフランカンまで続いていくように観せたいですね。代官山ヒルサイドは、部屋みたいな感じで、展示スペースが続いていくところなので、なんだか面白い空間が生み出せそうな気がして楽しみです。
――う〜ん。かなり楽しみです。制作がんばってください。
いつか、一緒に旅に出かけましょう。小さくても楽しい場所でいろんな人たちに会えるところ。
あ、それから、私はチーズをデザートに食べるの、好きなんですよ。でも、たいがい、いつも食べ過ぎて、おなかに入る余裕がなくなってるんで。今日は、美味しいゴーツをいただきますね。でも、しっかり、クレームブリュレも食べちゃおう。あっ。それからいちごも……。いったい、いつまで食べるんだろ……。
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↑← 教会横の高台へつづく道。
↑→ ドニの子供たちと。
↓← アパートの窓から眺めた、夕方の飛行機雲。
↓→ モンフランカンの木。 |
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