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中部エリア展覧会/イベント情報 一藤木葵
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 展覧会
   太田三郎展 / 端聡展 / フジイフランソワ展 / ファウスト・メロッティ展
   アンソール版画展 / 東アジア/絵画の近代
 イベント
   NCAF 1999名古屋コンテンポラリーアートフェア
 トピックス
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EventNCAF 1999名古屋コンテンポラリーアートフェア

会場:名古屋市民ギャラリー
   愛知県名古屋市中区栄4-1-8中区役所7/8階
会期:1999年4月13日(火)〜18日(日)
開廊:9:30〜17:00 会期中無休
  入場料:一般500円
  問い合わせ先:ナゴヤコンテンポラリーアートフェア組織委員会 052-232-3700


毎年春に名古屋で行なわれているアートフェア。横浜と東京で行なわれてきたNICAFの名古屋版と考えればわかりやすい。NICAFに比べかなり小規模だが、これまで休むことなく続けられている。
今年の参加ギャラリーは、地元名古屋、愛知県のギャラリーを中心に、東京や全国の画廊も加わり合計24画廊。それぞれのギャラリーが推すアーティストたちが個性を競い合っていた。例えば札幌のリーセントギャラリーでは、北海道で活動する若手のアーティストを紹介。中でも高幹雄の作品は、白いキャンバスに細かい青い幾何学文様が細い線でいっぱいに書かれ、目をひいた。画面は一定のリズムと密度を保ち、まるで古伊万里の文様のようにも見える。また一見しただけではコンピュータグラフィックスを使ったようにも見える。しかし彼はそうした伝統的な模様やCGを意識したわけではなく、ただ遠近感のみを気にしつつ、奥から手前へと下書も無く一気に描いたという。まだ23歳。これからが楽しみの作家だ。
またコンセプトスペースからは、中野西敏弘が出品。彼は95年から蓄光材を使った残像、光をモチーフとした作品を発表してきた。通常は暗い室内で見る光の残像現象をテーマにインスタレーションを展開しているが、今回のNCAFは会場の都合で、暗箱の中を覗く作品を発表した。
全体を通してみると、特にテーマも無く、また同じ傾向の作品が数多く並ぶというわけでもない。全体が見本会場のようで、多様化する現代美術の方向性、作家によりバラバラな方向性を見る思いがした。逆にそれが、こうしたアートフェアの楽しみでもある。
Exhibition太田三郎展 

会場:GALLERY-OH
   愛知県一宮市本町1-2-27
会期:1999年4月14日(水)〜5月16日(日)
開廊:11:00〜19:00 休廊=水曜日
  入場無料
  問い合わせ先:GALLERY-OH 0586-71-1530

太田三郎展
  「ツワブキ」(部分)
  1991年12月31日
  岡山県津山市北園町


太田三郎は、郵便切手をモチーフにした詩的な作品で知られる作家。各地で採集した植物の実物の種子を和紙に封印し、採取日と場所を記してミシン目を入れて切手とするなど、彼の作品には、常に時間と場所の関係性も明確に表現されている。

今回の展覧会は、4月の第一期、5月の第二期と、2部に分かれて構成されている。第一期は、「Weather Map Stamp」。新聞に掲載されている、気象衛星ひまわりが撮影した日本付近の雲を写した写真を用いた作品を展示。87年に衛星写真を2週間分並べて青色にコピーした切手状の作品を制作しているが、今回は、1日の雲の流れを1枚の単独シートに仕上げている。87年から99年にかけて、国内外で印象深いできごとのあった日の作品40点を出展。 第二期は、「Seed Project」。昨年9月、グループ展でパリを訪ねた際、彼は家族への土産用に花と野菜の種子を購入した。それらのパッケージに使われていた写真の一部をトリミングしてカラープリントした作品と、袋の中の種子を和紙に挟んで作った作品を対にして展示する。なお、この「Seed Project」はNCAFにも出展された。

Exhibition端聡展

会場:織部亭
   愛知県一宮市島崎1-11-19
会期:1999年4月16日(金)〜5月23日(日)
開廊:10:00〜23:00、 ただし15:00〜17:00は休廊 年中無休
  入場無料
  問い合わせ先:織部亭 0586-76-1993


端聡展端聡は60年生まれ。これまで主に北海道で活動してきた。拡大された写真、水、スピーカーといったものを組み合わせたインスタレーションを近年発表している。
今回の個展では、向かい合った二つのガラス張りの部屋の壁に、大きく引き伸ばしたモノクロームの写真を対峙するように張ったインスタレーションを展開している。会場は建物の2階にあり、その二つの部屋の間に通じる階段を上っていくと、ガラス越しに合計4人の顔に見つめられるという仕組み。
一方の部屋の写真の前には人の呼吸音が流れるスピーカーが、もう一方の部屋には水が置かれている。この二つは、安らぎと緊張を表わすという。
会場には外光も入り、その時間ごとに空間が変化する。作品には緊張感と強い精神性がみなぎっているが、それが光の加減でどう変化するのかが見所だ。
Exhibitionフジイフランソワ展「景 いつかめぐり会いましょう」  

会場:ハートフィールドギャラリー
   愛知県名古屋市中区栄5-4-33
会期:1999年3月30日(火)〜4月11日(日)
開廊:12:00〜19:00、休廊=月曜日
  入場無料
  問い合わせ先:ハートフィールドギャラリー 052-251-5007

フジイフランソワ展「景 いつかめぐり会いましょう」
アーティストの名前は国籍不明だが、れっきとした日本人。これまで名古屋を中心に活動してきた女性アーティストだ。イラストと絵画の間で一見ユーモラスな作品世界を作り出してきた。 今回の新作展は、絵画が画廊の壁をぐるりと囲み、パノラマの中にいるように見るものを包み込む。一点、一点の作品は独立した絵なのだが、インスタレーションとしてまとまると1本のフィルムを見ているような気分になってくる。森と空、そこに集まる鳥、虫や貝、魚。どれもまるで昆虫など小動物の視点から見たような細かさで微細に描きこまれている。現実にない風景なのだが、ありえないわけじゃないという、不思議な感覚にとらわれる。見る側の記憶や現実、幻想や空想の世界が、作品の中で彼女の感性と一緒になってくるのだ。作家自身の言う「人が生きているのはファンタジーとリアリティの間」という言葉は、こういうことなのかもしれない。 彼女の作品は「小技」が効いているのも特徴だ。「クスッ」と笑わせるような微妙なユーモアの入り込んだ絵画なのである。昨年の個展では、北斎の絵を鉛筆で写生し、その中に彼女の感性を入れこんだ。大波の上に「ニッポンチャチャチャ」という旗を持った人物が飛んでいるといった具合。そこには、過去の作品を引用するといった90年代に顕著に見られた現代美術の方向性は全く意識されておらず、「見る人を喜ばせ、その人と近づきたい」というイラストレーションの世界から導き出した、この作家なりの作品観がある。 どこか懐かしい、見たかった風景が描かれた展覧会だった。
Exhibitionファウスト・メロッティ展 魔法の庭――詩とかたちのフーガ

会場:愛知県美術館
   名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター10階
会期:1999年4月23日(金)〜6月13日(日)
開館:10:00〜18:00(金曜は20:00まで) 休館=毎週月曜日
  入場料:一般1100円/高校・大学生800円/小・中学生500円
  問い合わせ先:愛知県美術館 052-971-5511


ファウスト・メロッティ展ファウスト・メロッティは日本ではそれほど知名度の高くない作家だが、本国イタリアでは、20世紀イタリア美術の第一世代の中で、ルーチョ・フォンターナと並ぶ存在として高く評価されている。ヨーロッパ以外では、はじめて開催された回顧展だ。
音楽に深い関心を寄せ楽理とオルガン演奏を学んだ彼は、音楽の理論を応用して空間に秩序と調和を作り出す方法を模索することからスタートした。1935年、こうした古典的な音楽理論を応用した抽象的な彫刻作品を発表する。その後、インテリアデザイナー、陶芸家として活動を続け、再び50年代後半、音楽理論と造詣との調和を意識し、細い真鍮の棒を溶接して組み合わせ人体や動物の姿になぞらえた小さなブロンズ像、チェーンで球をぶら下げた作品を制作するようになる。軽やかに揺れ動く部分と、作品の全体が共鳴しあい、和音や旋律を奏でるような洗練された詩的な造形へ行きついたわけだ。
彼の青年期から最晩年までに手がけられた立体70点、陶器5点、素描30点の展示。巡回展はなく、愛知県立美術館のみの開催。
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