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當世物見遊山(とうせいものみゆさん)
アーティスト:荒蒔綾子、蟻川知子、池田朗子、釈永道代、ムラギしマナヴ
森太三、山本香、三木学、企画・谷本研
会場:お宿「吉水」
京都市東山区円山公園弁天堂上
会期:1999年5月21日(金)〜25日(火) 12:00〜18:00 会期中無休
お問い合わせ:tel.075-551-3995
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会場となったお宿「吉水」全景
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京都の祇園の八坂神社の続きに「円山のしだれ桜」で有名な公園がある。この公園のもっとも高台にあるのが、今回の展覧会の舞台となった「吉水」という旅館である。この百年の歴史をもつ宿で観光・物見遊山をキーワードに妄想の箱庭的世界が繰り広げられた。企画者の谷本さんは、この宿に暮らす本物の書生(?)でもある。
チラシがまず洒落ている。裏は、『京都名所一覧』(洛東円山公園の図、明治15年)の色刷りの双六(すごろく)になった版画で、勿論サイコロも切り取って作れる細工だ。表紙の部分が細長い三角のペナントのかたちをしている(最近見かけなくなりました)。
入り口で、入場料の五百円を払うと、入場札、おみやげ(酢昆布)とガイドブック、そして「梅升(うめます)」なる平安京型クロスワードパズルが手渡される。物見遊山や円山に因んだ言葉を集めた「言葉の因縁地図」とキャッチコピーのついたこのパズルは、何故この場所でこの展覧会を開かなければならなかったのか、その必然のようなものを語ってくれる。庭に設置された卍(まんじ)茶屋(荒蒔作)では、ちょっと一息つくこともできる。
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ムラギしマナヴ作品の部屋 |
客室を使った展示では、ムラギしマナヴが機知に豊んだ内容を独特の筆使いで描いた大きなタブローがあったと思えば、机の上には「ポケ盆」と名付けられた、ミニ盆栽もどきが並ぶ。洗面所で鏡をのぞけば、王冠のシールが張り付いていて、王女様にしてもらえる。反転された「Are you princess ?」の文字が鏡に付いていて、思わず口元がゆるんでしまう。洗面所などの石鹸は人型に彫られていて、お風呂場の石鹸はわずかに原型をとどめるのみとなっていた。これらは池田朗子の作品だ。水戸芸術館での「プライベートルームII展」では自らが扮装してラブホテルの部屋でセルフポートレイトを撮った写真作品を出していた山本香は、見る見られるの構造を、動物園の動物たちに対する人間の視線と置き換えて表現し、和室の畳を一畳分のホワイトタイガーの親子の写真を展示していた。出品しているアーティストのほとんどが二十歳代だ。広間には、この地の由来を示した資料と、作家の作品ファイル。傍らには書生部屋が仮設でしつらえられている。ここには、この企画のネタ本などが積み上がっているような楽屋裏まで見せている。企画者もこの展覧会を自らの作品と認識しつつ作られたこの展覧会は、続編が谷本さんのなかであたためられているようだ。
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兵庫 |
四角いジャンル
アーティスト:カワイ・オカムラ
会場:京都市四条ギャラリー
京都市中京区四条通高倉東入 四条東洋ビルB1
会期:1999年5月1日(土)〜30日(日)
開廊:10:00〜19:00 休廊日=毎週水曜日
入場無料
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サウンドと大画面に映し出された映像が、見終った後も脳のなかで響いている。前作の「Over The Rainbow」同様に、プロレスが出てくる。頭だけの機械じかけのレスラーは四角いリンクの上で、クルクル、カタカタ回転しながらぶつかり合う。「四角いジャンル」というタイトルの意味も、見ていると、大声を出して笑いたくなるほど、わかってくる。どしゃ降りの雨の光景のように見えていた映像と音は、やすきよ(やすしきよし)の漫才とダブらされていて、やすしが激する場面は雷とシンクロする。実写とアニメを混ぜ合わせ、独特の映像世界をつくり出している。素敵な笑いのセンスの持ち主であり、批評の精神も忘れないこのアーティストユニットの今後の活動は要チェックだろう。
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小野竹喬 生誕110年・没後20年記念展
会場:京都国立近代美術館 http://www.momak.go.jp
京都市左京区岡崎円勝寺町
会期:1999年6月18日(金)〜7月25日(日)
開館:9:30〜17:00(金曜日は〜20:00まで)休館日=毎週月曜日
入場料:一般1250円、高大生900円、小中生400円
お問い合わせ:tel.075-761-4111
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小野竹喬は18歳の時に早くも第1回文展に入選し、以来1979年に亡くなるまで70年にわたり京都の日本画壇で活躍した。竹喬が常に志向したのは、真摯に見つめた日本の自然美を胸中で醸成させ表現することだった。岡山県笠岡市に生まれた竹喬は、14歳の時に京都に出、当時京都画壇新派の先頭にいた竹内栖鳳の門に入る。さらに京都市立絵画専門学校別科にも学んだ。京都の伝統的な写生画を学ぶとともに印象派以後の西洋の美術に啓発され、セザンヌの実在感の豊かさや南画の自由さを取り入れた意欲作《島二作》で第10回文展において特選を獲った。
1918年には文展を離れ、土田麦僊、村上華岳、榊原紫峰らと国画創作協会を結成。1921年に、かねてよりあこがれていた西洋美術を実際に見るため麦僊らと渡欧するが、帰国後は次第に東洋に回帰する。そして1928年の国画創作協会解散後は帝展に復帰し、南画の線や大和絵の色彩を手がかりとして、第二次大戦後に詩情豊かな独自の画境を展開した。
1976年には、高齢にもかかわらず芭蕉の足跡を訪ね、自然の悠久の美を見据えた長い研鑚の集大成として《奥の細道句抄絵》10点を発表。おおらかに日本の心を歌い上げて、人々の感動を呼んだ。
本年は、竹喬の生誕110年と没後20年にあたり、これを機に、生涯の代表作に素描等をまじえた約130点をこの展覧会で展示するものである。
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SKIN - DIVE 〜スキンダイヴ、感覚の回路を開く〜
アーティスト:石内都、笹岡敬、白髪一雄、高嶺格、由良泰人+林ケイタ、
東京工芸大学メディア計画研究室、北海道大学電子科学研究所感覚情報研究室ほか
会場:元 龍池小学校
京都市中京区両替町御池上ル
会期:1999年5月25日(火)〜6月12日(土)
お問い合わせ:tel.075-222-4105(京都市文化振興課「芸術祭典・京」実行委員会事務局)
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この展覧会は、「私」と世界との界面(インターフェイス)である皮膚をテーマに、さまざまなアート作品、ワークショップ、対談や講演などによって構成されていた。
まず、この展覧会への導入部では、実際に皮膚に触れるもの、全身で感じる作品が、訪れた人を迎えくれる。人毛をタイルのようなブロックにして壁に張った「JAPANESE HAIR WALL」(地石浩章)は、赤や黄色や緑に毛染めした髪でつくられているので、色紙を並べたようにカラフルだ。しかし、その壁の小さなアーチをくぐると、裏面は黒い髪によってつくられた壁になっている。冷たく柔らかい粘土の上を裸足で踏んだ後、耳の不自由な人のためにつくられた音を体感できる振動ソファで大野松雄の音響「ゆらぎ#5」を聴く。すっかり鑑賞者たちは、何でも自分自身の皮膚でもって受け入れようというモードに入ってしまう。空気のなかにある振動を鼓膜が感じて音を認識するということ、そして皮膚という全身を覆う膜もまた鼓膜の役割を演じることができる。そのことをイマキュレート・コンセプト(端聡+児玉美紀)は視覚的に体験させてくれた。高嶺格のビデオ・インスタレーション「指紋のある部屋」では、長椅子に横たわったり、座ったり、椅子から下りて、床に転がったりする女性の様子が壁に投影される。そして、会場のなかにはその映像のなかに出てくる長椅子と同じものが置かれている。女性の皮膚が椅子に触れている部分が映し出される。二つの映像は一体のものである。肉体は存在しないが、椅子や床に触れている身体の表面だけが剥がれ落ちて映っている。
大学研究室が研究開発している感覚器官の機能を補う器具などを、健常者が体験することできる展示室では、自分自身が日ごろ無意識に使っている感覚機能を改めて認識することができる。
アート作品は装置ともなりうることは、決して教育的な押し付けとは異なる。美術作品と機能をもった器具とは同じでありようがないのだが、時として似ているような印象を与える。
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