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Hardware |
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印刷からプリンタ出力の時代へ−展示作品もコンピュータから即出力
ギンザ・グラフィック・ギャラリー
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「Graphic Wave展」1999
鈴木 守・松下 計・米村 浩 展
戸田ツトム展「D-ZONE」2000
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グラフィック専門のギャラリーに展示されるポスター作品などが、印刷から出力に突然変わりはじめたのは、昨年1999年9月開催の「Graphic Wave展」からだと思います。グラフィックデザイン界のニューウェーブ3人による競演展で、各自が自分の好きなテーマをポスターにして発表しました。驚いたのは、3人とも大きなB倍判(1030×1456mm)の作品を多数出品したことでした。なぜなら、もし印刷でB倍判(4色)で20点もの作品を作れば、1千万以上は確実にかかるからです。しかしよく作品を見ると、印刷独特の網点がなく、カラーコピーのようなものだとわかりました。出展作家の一人鈴木守さんは、ご自分でセイコーエプソン社の出力機を所有していて、作品作りからデータ入稿、出力までをすべて一人で済ましてしまうという画期的なことをやってしまった訳です。
つまり作品は、写植なし、製版なし、印刷なしで、まさにComputer to Paper(コンピュータ・トゥー・ぺーパー)、コンピュータからいきなり紙に出てしまうからです。正直いって、私どもは印刷物専門のギャラリーですから、今後印刷はどうなってしまうのだろうと不安になりました。
その後何人かのアーティストがこの方法での作品作りを試み好評を得ました。そして今年10月、ちょうど「Graphic Wave展」から1年後、今日のデジタルグラフィックの基盤を作られた戸田ツトム氏の個展を開催しました。ポスターサイズで出力された作品の数々は、ご自身の書籍をそのまま拡大(DTPデータ、CGや図像を天地1288mm)したもので、解像度の設定や拡大にともない編集、検討がくり返されたものです。出力はエプソン・マックスアートMC−9000。カラーは三菱インクジェット、用紙はIJ-NMB HA/1270-30mが使用されました。
拡大されプリントアウトされた作品は、圧巻の一言。一年前より進化していて、通常の印刷物よりも発色がはるかに良い状態。びっくりしたのと同時に唖然とさせられました。
さらにセイコーエプソン社によれば、作品の耐光性がなんと200年も確保されたということ。また最近では、「ピエゾグラフ」というデジタルプリント技法を開発し、リトグラフ、シルクスクリーンではできなかった色彩再現、マチエールを実現して新しい表現方法を確立しつつあるとのことです。
いま、ポスターをはじめとする大判の小ロットの制作物は、印刷する時代から、コストや時間を大幅に削減した出力する時代になりつつあります。ふり返れば、戦後の印刷技術とグラフィックデザインの進歩は表裏一体、お互いにその価値を高めあいながら今日まできました。しかし、21世紀を目前にして、グラフィックデザインと印刷が別のベクトルに向かって離れ離れになりつつあります。ギャラリーに展示される作品に、印刷された作品が少なくなるのは時代の趨勢としても、元印刷会社の社員としては、さらなる印刷技術の限界に挑戦して欲しいものです。
最後に私どもギャラリーの宣伝です。今月の22日まで「本とコンピュータ展」そして2001年1月は「木田安彦展」を開催します。世紀の変わり目の両展覧会は、セイコーエプソン社のご協力により、新作の半分以上がなんと出力作品なのです。ぜひご来場下さい。【ギンザ・グラフィック・ギャラリー 北沢永志】 |
ギンザ・グラフィック・ギャラリー
本とコンピュータ展−書物変容・アジアの時空 2000年12月4日(月)〜12月22日(金)
木田安彦展 2001年1月12日(金)〜1月31日(水)
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Software |
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手づくりソフトで町おこし−第8回全国ハイビジョン手づくりソフトコンクール
小海町高原美術館
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以前紹介した小海町高原美術館で、11月23日、勤労感謝の日に「小海町高原美術館 受賞記念特別上映会」が開催された。上映されたのは、第8回全国ハイビジョン手づくりソフトコンクール(11月2日、岐阜県大垣市にて開催)で優秀賞を受賞した『プティリッツア物語』。制作は、小海町の町おこしを考える会"こうみ塾"のメンバー。小海町高原美術館の中嶋実学芸員の指導のもと、初制作、初出品での受賞となった。
こうみ塾が取り組んだテーマは、松原湖高原に棲む森の小人プティリッツア(ノームの言葉でノームという意味)。人間の物欲に愛想をつかし、森の奥深くに棲むプティリッツアは、人の目に触れることがほとんどなく、小海町の人々にプティリッツアを理解してもらおうと企画・制作された。こうみ塾のメンバーである八岳晴耕(宮 昭雄)氏は、八ヶ岳の麓、松原湖高原近辺に棲むプティリッツアに、1991年から1992年にかけて、何回か出会ったと確信している。ちゃ〜んと、名刺にもプティリッツアと「私は会いました」とコメントされている。中心メンバー7名、制作時間400時間。次回作にも意欲を見せている。
上映会当日の会場は、満員の大盛況。このほかに、広島県国民文化祭映像祭にて広島県教育委員会賞を受賞した『生きる全ては出会いから』と『緑の中の松原湖』が上映された。『生きる全ては出会いから』(ノンリニアPC編集)を制作した小海小学校の中沢校長は、着任1年。画像に理解と腕を持つ頼もしい仲間。これからの小海町に目が離せない。
『プティリッツア物語』は、毎週土日、年末年始に小海町高原美術館ハイビジョンギャラリーにて随時上映されている。お近くにお越しの節は、ぜひ覗いてみてください。
ちなみに、NHK BSデジタルハイビジョン開局特番の取材が入った。 |
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