アートカフェ特集をやるので、きむらとしろうじんじんさんの取材してきてください、と頼まれたのだが、他の媒体でインタビューは既にやっているので、彼もいいけど、アートカフェはいっぱいあるよ、ってことで、関西にあるちょっとお気に入りカフェをいくつか紹介したい。
きむらとしろうじんじんさんや小山田徹さんの関わっている京都の(バザールカフェ)をまず紹介したい。いまや、海外から京都に来るキュレーターや美術関係者たちが必ず立ち寄ると言っても過言ではないかもしれない。そんなバザールカフェはアートにかかわる人だけではなく、海外からの留学生や就労者、さまざまなタイプのNPOなどのメンバーもかかわっている。もともと(今も)キリスト教の牧師会館だったことから、多くの人に開かれた場所として機能してきた。大きな庭にはり出したテラスで飲むお茶は格別に美味しい。そして、日替わりで厨房に入っているいろんな国の出身者が自国の料理をメニューに盛り込んでいる。いまは、木・金・土の週三日だけの営業だが、もっと開いてくれればな、と思う。
「馴染みの店」なんていう表現があるように、いつの間にか常連になっていたりする店があるものだ。居心地のいい店で美味しくお茶をしたり、お酒を飲んだり。楽しく会話ができたり。わたしにとって今一番のそんな店は大阪は北浜にあるworkroomだ。
マニアックな本もそろっている
ワークルームの図書コーナー
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workroom(ワークルーム)は昼間もよし、夜もよし。でも、川に面したカウンターでゆっくりと過ごすのは、やっぱり黄昏れ時がいい。夕日がさしてきた頃から日が沈むまでの間の窓からの景色は大阪イチといっても言い過ぎではないと思う。で、そこってどんな所?ということになるだろう。すでにartscapeでも以前にアイデアル・コピーが内装などのデザインをしたカフェとして紹介したことがある。兵庫県立近代美術館の平井章一さんが講師をつとめる「前衛たちの時代〜関西の戦後美術グループの記録と記憶」という12回の連続講座が月1回あったり、「サロン火曜派 美術の時間」、「芸術作品について英語で話しましょう」なんていう英語教室、テルミン教室などがレギュラーである。そのほかにも単発の講座が盛りだくさんだ。ライブラリー(図書コーナー)の本もかなりマニアックなものがそろっていて、自由に閲覧できるのも嬉しい(ただし、貸出しはしない)。映画などのヴィデオテープも収蔵されていて、据え置きの小さなモニターでお茶を飲みながら観たりも可。講座などの後、講師を囲んでビールを飲んだりという光景も目にする(けっこう、真面目な受講生から質問攻めにあっていて、もしかすると講師は楽しくないかもしれない…あっ、失礼、そんなことないか)。月曜から土曜まで、午後1時から11時まで開いているので、歩いてもオフィスから15分ほどの距離なので、ついついこの季節は生ビールを飲むために寄ってしまう。このワークルームの運営にあたっているのは、同じフロアにある画廊のSAI GALLERYの西元洋子さんと、編集者の塚村真美さん(知る人ぞ知る。伝説のフリーペーパー「花形文化通信」の元編集発行人)。こんな場所をつくってくれて本当に有難う、と感謝の念でいっぱいである。
book cellar amus(ブックセラーアムス)はブックショップだが、ここにもカフェが併設されている。こちらでやっているレクチャーも個性的な企画が多い。先日、行なわれたのはシャンソン歌手のシモーヌ深雪さんによる「シモーヌ流 現代美術のたしなみ方 〜謎とからくりを暴く〜」。小さいながらギャラリースペースもあり、都築響一さんの個展など、こちらも個性的。食事が美味しいカフェもイケている。キッシュが美味しい(コンテンツレーベルカフェ)を運営しているのはまだ20代の奥山さん。展覧会あり、レクチャーあり、ライブあり、デザイナーやアーティストなど、いつも若いクリエーターたちのたまり場になっている(ちなみにここも私のオフィスから徒歩5分)。どうして、みんな集まってくるのか不思議なのだが、ジャンルの違う連中も皆んな知っていて、通っているらしい。
それから、cosmic wonder(コズミックワンダー)などが入っているラポビル(南船場)の1階のCha-long(チャロン)は壁面の作品がときどき変わる。というか、画廊といっしょになっているというほうが正しいのか。木村友紀や喜多順子ら関西の気鋭の若手作家や、外国人アーティストの発表の場にもなっている。
で、最後に、ご要望のあったじんじんさんの「野点」のご紹介を。「焼立器飲茶美味窯付移動車」という名前もついているのだが、屋台式の窯のついたリヤカーでじんじんさんがロクロをひいて素焼きした茶腕に絵付けができ、それをその場でドラッグクイーンメイクのじんじんさんに焼いてもらえて、出来上がったそのお茶碗で彼がたてたお茶を飲めるというもの。色をつけている間も、店主(?)のじんじんさんと楽しくおしゃべりができたり、たまたま隣合わせた人と知り合いになれたり、それはそれはたいそう素敵な作品なわけ。お客さんはクチコミでどんどんと増えていくので、店主のじんじんさんも嬉しい悲鳴を上げている。
「アートナウ2000『なごみ』のヒント」(兵庫県立近代美術館) にも「野点」は出品、美術館の周辺で週に1回程度屋外で営業をしていた。パリで約1ヶ月におよぶ路上での営業を行なったが、日本ではさまざまな規則などの制約があって、あらかじめ決められた場所でしか店開きできないのが悩みの種。
人がいるから、アートがあって、人がいるから会話があって、和めて。どんなにおしゃれなデザインのカフェも流行らないことはあると思う。やっぱり肝心なのは人なんですよね。
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