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Recommendation
大阪  原 久子
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exhibitionグリーン・イン・スピリット 坂井淑恵/高橋信行

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高橋信行「お参り」
高橋信行「お参り」




 坂井淑恵と高橋信行の二人展。二人はいずれも30歳代前半の若い作家だ。そして、絵画作品を制作している。展覧会名のグリーン・イン・スピリットとは、「若々しい」という意味があり、そこに「なんらかのフィルターを介して再解釈された自然」というニュアンスを重ねてみた、とカタログに企画者が書いている。
 展示空間は互いの作品が、干渉し合わないかたちに、二室に分けられている。一室めに入ると、まず坂井の油彩によるペインティングと出合うことになる。グリーンを基調とした画面のなかに登場するのは、ひとつの頭部であったり、ひとりの人間であったりする。いずれも水のイメージを強く印象づける作品だ。そして、身体と触れ合うものの境界面の皮膚感覚や、精神と肉体とがどこかで遊離したような感覚を想起させる。
 高橋作品は、紙に描いたドローイングと、キャンヴァスに油彩またはアクリルによるペインティング作品を出展している。日本の自然や風景をモティーフにしている。輪郭だけで、色をのせずにおかれた屋根。日本が紹介されるとき、必ずといっていいほど登場する古くからある建造物をとらえた典型的な構図から、そこにあるものを抜き取ることや、リアルに色を塗る代わりに格子縞といったシンプルなパターンと置き換えることで、見るものに問いかける。
 一見、接点を感じられない二人の作家だが、それぞれ真摯に主題を追い求めているという点。その意味で、若々しい精神を感じる展覧会だ。

会場入口
坂井淑恵作品展示風景
高橋信行作品展示風景
会場入口


坂井淑恵作品展示風景


高橋信行作品展示風景
(1998-99年)

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会場: 芦屋市立美術博物館
兵庫県芦屋市伊勢町12-25
期間: 1999年9月4日(土)〜10月17日(日)
問い合わせ:tel.0797-38-5432


information公開アトリエ・銅版画工房のSUMISO オープン

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 大阪の道頓堀といえば、ネオンサインに食いだおれ、というイメージが広くゆきわたっている。にぎやかな繁華街から、西に5分ほど歩くと家具屋が軒を連ねる街がある。SUMISOはそんな街の一角にできた。もともと倉庫として使用されていた建物の2階部分をつかっている。2階といっても普通の建物の天井の高さとは比較にならない。ちょっとした建物の3階部分くらいだろうか。鉄製の階段をコンコン、コンコンという靴音とともに一生懸命に昇ると、開放感のあるアトリエが並んでいる。
 銅版画の工房(han-haus)と白い壁で区切られた制作と展示・発表の場(kunst-haus)。銅版画工房は、スタジオとスクールとの2本立て。アトリエのレンタルは最長で8週間まで。8室あって、それぞれ少し大きさも異なる。2、4、8週間単位で貸し出される。勿論、賃料は大きさと期間の長さによって変わってくる。
 オープニングは、運営を担当するCLEAN BROTHERSメンバーの長井かほるなどが作品を展示した。白い壁と高い天井は展示にむいている。これからは、さまざまなアーティストたちがここで実験的な試みをやっていく予定だ。すでに、ベルギーから来日するアーティストが10月から制作に入る。いくつかのプロジェクトの話も少しずつ進行中で、この場所を舞台に、さまざまな個人やグループによる制作と発表が繰り広げられようとしている。
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SUMISO http://www2.osk.3web.ne.jp/~sumiso/
大阪市西区南堀江1-17-7 道頓堀倉庫2F
問い合わせ:tel.06-4390-5551

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information新しいタイプの画廊がぞくぞくと始動

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 10月末までやなぎみわの個展を開催中のKodamaは、この夏オープンしたばかりだ。オーナーの児玉公義は30歳。ニューヨークと大阪を行き来しながら、世界のコレクターを相手に仕事をしようとしている。取り扱い作家の企画展のみを展開していこうと考えているという。
 Oギャラリーeyesは、こけら落としは「絵画劇場」というシリーズではじまり、第1幕・吉本作次、第2幕・朝比奈逸人、第3幕・増田聡子、第4幕・稲垣元則/田中朋子/西村みはるというラインアップで10月末まで第1弾の企画が続く。Oギャラリーeyesで実際に運営に携わる人といえば、唐木満。彼はもともと絵画の制作としていた作家だ。いっしょに館勝生という現役作家も、唐木をサポートする。アーティスト自身がコーディネートをしていく画廊ということで、これも目新しい。
 南森町から北浜に引っ越して、リニューアルオープンをするのがSAIギャラリー。こちらは、フロア続きにレクチャールームとショップ、アイデアル・コピーがデザインしたカフェができている。
 紹介してきたような大阪市内中心部とは違い、かなり離れた場所でアート・スペースをはじめたのはTeNBA-A。大阪市内からは1時間半ほどかかる大阪の北部にある。まわりの自然環境は、虫の音にしても、風にゆれる木々、向かい側にみえる小高い山並……といった具合だ。すでに、桐原淳行、善住芳枝、椎原保+藤枝守などの展覧会を催しているが、ガラス越しに見える風景と作品との関係を楽しむこともできる。1時間に1本しかないバスに揺られて来ても、ここで味わえる穏やかな時間があれば、十分に得をした気分になれる。
 これら4つのスペース以外にも、大阪は新しいタイプの個性的な画廊が、こんな時期にもかかわらず、にわかに出てきはじめた。これからの活動が期待される。
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Kodama
やなぎみわ「夜半のねざめ」

会場:Kodama
大阪市中央区備後町4-2-1 tel.06-4707-8872
会期:1999年9月25日(土)〜10月30日(土)
開廊時間:11:00〜18:00 日・月曜休廊

TeN BA -A(テンバ・エー)
劇場の連鎖 椎原保+藤枝守展

会場:TeN BA -A(テンバ・エー)
大阪府豊能郡豊能町牧中田20-4 tel. 0727-39-2444
会期:1999年9月16日(木)〜10月10日(日)
開廊時間:11:00〜19:00

SAIギャラリー

移転記念展−気配− 大森裕美子・福岡道雄・松井智恵・村岡三郎
会場:SAIギャラリー
大阪市北区北浜2-1-16 永和ビル6F  tel. 06-6222-6881
会期:1999年10月14日(木)〜11月13日(土)
開廊時間:12:00〜19:00(土曜日17:00) 日曜日・祝日休廊

Oギャラリーeyes

絵画劇場―第三幕 増田聡子展
絵画劇場―第四幕 稲垣元則/田中朋子/西村みはる展
会場:Oギャラリーeyes
大阪市北区西天満4-10-18 石之ビル3F tel.06-6316-7703
会期:第三幕1999年10月4日(月)〜16日(土)
   第四幕1999年10月18日(月)〜30日(土)
開廊時間:11:00〜19:00(土曜日17:00) 日曜日休廊


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report美術ライター・レポート

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大阪の元気がよくなってきた!

 SUMISOや新しくオープンした画廊、そして、アート系のブックショップなどが、次々と大阪に開店することになった背景にあるものとは何なのだろうか?わたしが画廊や美術館をまわるようになって約14年。この間、考えてみれば、世の中いろいろ変わっていったというのに、関西における現代美術をとりまく状況というのは、ほとんど何も変化がなかった。80年代に「西高東低」などともてはやされた(?)こともあったのだが…。アーティストは個々に自分の道を切り開いていった。淘汰される人もいただろう。その一方で、アーティスト以外の周辺の人々は何をしていたのか。しかし、ここにきて、さまざまなかたちで考えていたことを行動にうつす人たちが増えてきた。自分の役割をそれぞれのスタイルで果たそうとしはじめたのかもしれない。
 とにかく、いま元気のいい大阪に、追い風が吹いてくれることを心から願っている。

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