3. 需給関係に基づく拠点づくり
コミュニティが形成され、ある種の需要が見込まれると、私営・公共・非営利の諸団体がそれに対応してさまざまな場を作り出していく。施設の導入が、需給関係に拍車をかけることはあっても、先にモノや場所があって何かが生まれてくるわけではない。
これは各種アートの拠点とも言えるような場所についても同様である。The Lux Centre、VIBE BAR、Delfinaでは、必要とする人々が周辺にいるから、情報受発信の場、文化的な刺激を受けられる場、カフェ的な交流の場などが用意され、さらに求心力を増すという相乗効果をもたらしている。
4. 新しい表現の追求
拠点として機能する場所にはユニークなエデュケーション・プログラムが備わっている。先生−生徒の「教育」関係ではなく、立場を超えて新しい表現を追求・育成していく場が用意されている。
The Place、AA[Architectural Association]などの教育機関はもちろん、上記の拠点となる場所にも最新の映像機器や制作スタジオがあり、絶えずユニークな人が集まり、互いに刺激しあいながら、新しい潮流を作り出している。
5. コミュニティの場
こういった要素やプロセスに基づき、テイト・モダンに象徴されるようなイギリスでのアートの位置が獲得され、社会的影響をもつに至っている。これはロンドンのアーティスト・アート関係者が成しえた大偉業ともいえる。しかし、この偉業も詮ずればマイノリティとしてのコンテンポラリー・アートが市民権を獲得したということにすぎない。アートに社会を変えていける力があるとすれば、その活動領域はさらに拡大されてもいいはずである。アートコミュニティに限らないコミュニティの場へと。
ここで最後に、アートカフェ的なものについて考えると、これまで述べて来たようなアートを中心とした展開のなかで自然に発生してくる場と、アートシーンに限らず社会に影響を与えうる場(コミュニティの場)として機能するものが想定できる。しかし、後者の場(施設、公園、カフェ、Web siteなど)の完成は絶えず先送りされ、場所に限定されないコミュニティ間での数々の対話や協議の結果が微かな形をもって具現化されるにすぎない。この魅力的ではあるが、非常に危険な場とどのように係わっていくか、まさにアートの真価が問われることとなる。
さまざまな人種が渾然一体となっているロンドンのコミュニティで、以下の事例がどれほどの効果を上げられるのかは疑問もあるが、現在進行中の取り組みとして上げておきたい。
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