logo
TOPICS
..
 

創造と交流の場として生まれかわった元小学校

..
京都芸術センター玄関付近
京都芸術センター玄関付近

京都芸術センターには建物でコの字型に取り囲まれた校庭がある
京都芸術センターには建物でコの字型に
取り囲まれた校庭がある

 京都と大阪で相次ぎ、元小学校の校舎が芸術文化の発信基地として稼動しはじめた。
 京都芸術センター(運営母体は京都市)として生まれかわった旧明倫小学校(1869〜1993年)では、パイロット・プログラム「アートアクション京都」がすでに97年度から試みられていた(nmp-j 1998 feature 関西特集)。新進・若手の芸術家たちへの支援として、制作室を作品の創作や練習のために貸し出す(無償)ことが活動の柱の一つだ。12室ある制作室の貸し出し(基本的に無料、使用は3ヶ月以内、年2回申請受付)と、ギャラリーや講堂などでの展示や公演などの催しが行われる。機能としては、他分野や伝統的な文化遺産と現代の表現との出会いを目指す自主事業、情報誌や情報サイトなどの編集刊行、内外のアーティストの交流などを目的としたアーティスト・イン・レジデンス事業などが繰り広げられる予定だ。利用時間も午前10時から午後10時まで(一部の施設は午後8時まで)、年末年始のみ休館となっている。
 92年度から京都市がすすめているの小学校の統廃合で、すでに20校ほどが廃校になっている。その跡地利用として、元明倫小学校はアートアクション京都が推進される前から、ワークショップ等に使用されており、さまざまなことが実験実証されてきた。そして、昨年1月から1年をかけて、建物の元の姿を損なわないかたちで残し、利用しやすくするために改修補修工事が9億8,500万円を投じて行われた。延床面積5,209.35平方メートルの館内には、フリースペースやカフェ、情報コーナー、図書室、ギャラリー、講堂のほかに、畳敷きの大広間もある。
 ジャンルも偏りなく、演劇・ダンス・音楽・美術のみならず、茶道・華道他まで網羅。オープニングの記念事業(2000年3月18日〜4月2日)では、伝統的な能・狂言、京舞から岩下徹のダンス&ワークショップや、高谷史郎(ダムタイプ)の映像インスタレーションまで盛りだくさんな内容で、多くの市民を楽しませた。4月5日までにすでに延べ7,746名が利用していることを聞いても、その注目度の高さが感じられる。
 スタッフは13名、コーディネーターと呼ばれる専門職が6名、他は市役所から異動してきた職員などで運営されている。184名登録しているボランティア・スタッフが、イベント中は平日で約30名、土日には約60名が運営を手伝った。さらに、驚くことには、ご近所の方たちだけでなく、大阪や兵庫などの近隣の府県からも、そのボランティアの人たちが来ているということだ。老若男女を問わず、学生から主婦、リタイアした高年齢者まで幅広い層が協力している。作り手と直に交流を持てることなどに興味を持った人たちが積極的に参加しているという。

京都芸術センター
長い廊下
ちょっと懐かしい雰囲気の長い廊下

「ひとつの夢」の会場風景
フランス人アーティストのジャン=バティスト・ブリュオンによる3台のプロジェクターを使ったビデオ作品「ひとつの夢」の会場風景。この日はジャン=バティストとマリア・スパンガロによるパフォーマンスも行われた(3月26日)
撮影:山本淳夫

 一方、大阪・難波では、旧精華小学校・幼稚園の跡で、「精華小劇場コトハジメ」(〜6月4日)というイベントがはじまっている。5年前に廃校になったこの学校も、すでに若いアーティストの展覧会場としてなどさまざまなかたちで使用されてきている。大阪市などが「芸術と社会の接近対話」をテーマに掲げ、各方面の現場にたずさわる関係者などの協力を得ながら、地域の活性化を望む地元の人たちに受け入れられ、活動がはじまった。
 京都・大阪ともに、これらの施設は中心市街地に位置する絶好の立地にある。ともすると、郊外などのアクセスが悪い場所に追いやられがちな芸術文化施設だが、アートは人や社会といっしょにあって受容され、コミュニケーションがはかれてこそ、役割が発揮できるだろう。
 名古屋でも使用されなくなった港の倉庫の利用として、昨年「アートポート99」というパイロット事業が行なわれた。今年は展示発表だけでなく、スタジオとしての機能を持たせる計画になり、使用者の募集が5月からはじまることになっている。地方自治体の多くが破産寸前の時代を迎え、一番に予算を削られてしまいがちな芸術文化だ。莫大な予算をかけて新しい施設(ハード)を建設し、ソフトに予算をつけないことが問題にされてきて久しい。元小学校を利用したこれらの例は、今後、各所で文化政策のサンプルとして注目されていくはずであり、先駆的な活動ゆえに責任重大だ。よりよい影響を残していくように、内容の充実がさらにすすんでいくことが期待される。

..
京都芸術センター オープニング記念事業
会期:2000年3月18日〜4月2日
問い合わせ:Tel. 075-213-1000

京都芸術センター
■縛られた身体と心の叫び「ビル ビーチ展」
会期: 2000年4月27日〜5月28日
会場: 京都芸術センター ギャラリー南・北
映画『サイレント スクリーム/静かなる叫び』、ドローイング、写真による構成グラスゴー(イギリス スコットランドの都市)のバーリン刑務所で、終身禁固刑の囚人の凶暴性や看守達との対立を解くために実験的に行われた芸術活動による試みから出発したものである。
この実験は、囚人から十数人を選び、特別収監室に収容し、外部から芸術家の参加を得て囚人のさまざまな芸術的能力を開花させることにより、精神の安定を期するものであった。かつて、ボイスも参加したことがあり、数年続いたが残念な がら現在は閉鎖されている。この活動に参加し、ラリーという囚人の内的芸術性に触発されつつ、ビーチがかかわりつづけた表現、ラリーの遺した獄中詩やドローイングを読み解く事により制作された作品の集大成である。

■第2回 明倫茶会
日時: 2000年4月15日(土)13時・14時・15時・16時(各30人)
会場: 京都芸術センター 和室「明倫」
料金: 事前申込制、1000円

今回のお茶会は常道とは一味違った美術作家によるしつらえとお点前、それにお差支えのないお客様は、ご自身の普段使いのお抹茶茶碗をご持参くださり、その一服で心たのしい一刻をお過ごしいただこうという気楽なおCHA会。席主は、ギャラ リー16(京都)の井上道子さん。

■伝統芸術創造プログラム「継ぐこと伝えること 近世をうたふ(仮)」
日時: 2000年5月6日(土) 午後7時〜
場所: 京都芸術センター 大広間
内容: 三曲・筝歌などで構成される演奏と簡単な講演。
料金: 事前申込制、1500円

■京都国際ダンスワークショップフェスティバル 京都の暑い夏2000
会期: 2000年4月14日〜5月17日

京都芸術センターを舞台に世界中で活躍する南アフリカ、フランス、ドイツ、京都のダンサー・振付家を招いてダンスのワークショップのフェスティバルを開催。

問合せ先・申込先:TEL/FAX 075-752-9355 京都の暑い夏事務局
         〒606-8301 京都市左京区吉田泉殿町8 関西日仏学館内 


精華小劇場コトハジメ
■デモンストレーション
「本を読む」出演:二口大学、松本エリハ(料金1000円)
日時: 2000年4月29日(祝)

■身体表現講座「春塾」
2000年4月18日〜5月26日(有料)
プログラムはA〜Jまで
予約・申し込み:Tel. 06-6211-2506 トリイホール

■アーツワークプログラム
・パーソナル・ミュージック・パーティ(参加費1000円)
 日時:2000年5月14日(日)14:30受付、15:00開始

・同窓会deアート!(参加費500円)
 日時:2000年5月20日(土)13:00受付、13:30開始

・「アーツアクセスする大阪〜精華小学校の春〜」(参加費1000円、但し、27日「本を読む」公演の料金も含む)
 『なんじゃいな Arts Access』
  日時:2000年5月27日(土)13:30開始
 『どないしょう 精華小学校』
  日時:2000年5月28日(日)13:30開始

■ワークショップ
「光の劇場に向けて」(8日間通しで15,000円)
日時: 2000年5月28日〜6月4日 時間は日によって変わります
申し込み・問い合わせ:Tel. 06-6645-8484 精華小劇場実行委員会事務局

top


home | art words | archive
copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 2000