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関西特集トピックス−4
街の活性化にアートを、という願いは……
原 久子


疎に悩んだり、地域の活性化を望んでいるのは、地方の山村だけではない。都市でも同様の問題を抱えている。御多分にもれず、大阪や京都、神戸の中心部でもそういった現実に直面している。そこで、注目されはじめたのがアーティストの存在だ。芸術文化の担い手である芸術家たちを支援したり、アート・イヴェントを催すことが、豊かな街づくりを進めていくことにつながるといった考え方が、ここ何年かの間に広く浸透してきた。

大阪では「阿倍野SOHOアートプロジェクト」と呼ばれる計画が、先陣をきって93年にたちあがり、阿倍野(大阪市阿倍野区)の街を、新しい芸術文化の発信基地にしようといった動きが出てきた(SOHOというのはもちろんNYのSOHOを意味している)。 広いアトリエを借りるには経済的な負担を強いられるため、若いアーティストの多くが、制作の場を求めていることに目をつけたプランナーが働きかけたものだ。これはバブル崩壊後、土地は買収したものの、計画されていた大規模なプランの頓挫などで、住民もいなくなった地域の空洞化を何とかしなくてはいけない、ということで動き出した遊休地利用策でもあったと思う。使用されていない建物をアトリエやギャラリーとして提供したり、活動する若者の様子を取材したフリーペーパーを発行するなどしていた。しかし、いつの間にかフリーペーパーもみかけなくなり、大がかりなイベントも姿を消した。当初と比べると、影が薄くなったものの、今もこのあたりの広い工場跡などをスタジオとして制作を続けているアーティストはいる。

京都の西陣では、後継者の少なくなった西陣織の街の活性化を狙って、空き家になっている個人住宅をアーティスト・イン・レジデンスのような発想で、アーティストに貸し出している。また、室町通りは呉服問屋が昔から軒を連ねているが、この街も着物を中心とした繊維産業の低迷とともに寂れてきている。ここに今年の2月から3月にかけて限定で、貸しビルの空きスペースを、インディーズ・ブランドのファッションデザイナーと若いアーティストに利用してもらい「THE SHOP HEXAGON」を開店した。若いエネルギーを街の活性化につなぎたい、という地元の有志によって持ち上がった話で、今後もこういったプロジェクトを継続していきたいと検討されているそうだ。神戸の新開地では、神戸アートヴィレッジセンターという文化施設が96年にオープンした。ホール、アトリエなど充実した設備とスタッフを用意したこのスペースは、若手アーティストの育成と同時に、新開地の街を活性化していくことを目的として設立された。

少子化や夜間人口の激減で、京都の都市部では、92年度から小学校の統配合がはじまり20校が廃校となった。その跡地利用として、97年度から旧明倫小学校が京都アートセンター(仮称)のパイロット・プログラムの「アートアクション京都」という支援事業を京都市がはじめた。演劇・美術などジャンルを問わずプロジェクトを申請すると、審査によってアトリエとして一定期間(半年間、98年度から3ヵ月間)の使用が許可される。使用料は無料で、市街地であるため騒音の類など、多少の規制はあるが、アーティストにとっては有難い話である。月に一回、オープンアトリエのようなかたちで催しも行なっている。アートアクション京都のように、街の活性化をうたい文句にしない活動というのは、非常に珍しい。
関西のあちらこちらで、さまざまなプロジェクトが立ち上がるのを見ながら、実際には、街の人々との交流も乏しく、「街の活性化」に役立つような動きが少ないことが気がかりでならない。

阿倍野SOHOアートプロジェクト Tel.06-621-9241
アートアクション京都事務局 Tel.075-221-3058
神戸アートヴィレッジセンター Tel.078-512-5353
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