夏のワークショップ特集
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  子供のためのワークショップ
はじまったばかりのワークショップの試みの思考錯誤(京都市美術館)
                           ……原 久子

 昨年度は展覧会のテーマや内容にそって企画していったワークショップを、今年度は展覧会とは分離して、開催時期を夏休みに集中させ、子どもを対象とした内容とした。これまで長い歴史をもつ美術館ではあるが、普及事業についてはそれほど熱心に行なってきたわけではない。市民を対象とした絵画教室や企画展などにあわせた公開講座といったものを不定期で催してきた程度である。
 より開かれた美術館であることを目指して、昨年度からワークショップの実施に力をいれはじめた。昨年の例としては、『三星堆展』の開催にあわせて、当時(3000年前)からあった技術がいまもいかされているということを紹介し、参加者がつくりたい造形物を鋳造の技術を用いてつくりあげた。『パリの100年展』の出品作品をもとに鑑賞教育プログラムを実施するなどした。また、この展覧会のサブテーマである「肖像」をタイトルにすえてアーティストの石原友明が講師となって、“みること”“みられること”の交換と循環を、写真のコラージュの手法をもって作品制作につなげ、参加者が5〜6名のグループ毎に自分たちの「肖像」をつくり出した。
 現代美術以外の展覧会の場合でも、現代美術にかかわるアーティストを講師として迎えることをあえて行なった。観念的であったり、抽象的であったりして、一般の人からは敬遠されがちな現代美術的な概念も、ものをつくることや、意見を交換することを通して、親しむための足掛りをつくることに一歩近づくプログラムであった。

 この夏に予定されているワークショップは4企画ある。それぞれ下記のような内容を計画している。

■「なんでも解剖図!」(講師:中川佳宣)8月6日開催予定

 私たちは日常すでに完成された既成のものを用い、必要がなくなったり、機能しなくなると廃棄する。いったいどんなふうに出来ているかも知らないままに、形のあるものを捨てていくことに疑問を感じることすら忘れている。家庭で必要のなくなったものをモティーフとして持参してもらい、まず、いったん解体して、その構造を知ることにつとめてみる。それから実際にどういうものなのかをよく観察し描いてゆく。解体したモティーフはもう一度元の姿に戻してから持ち帰る。

■「“大きすぎる絵本”どーしよう!?」(講師:井上信太)8月8日開催予定

 まず各々に10匹ずつの動物を厚紙に描き、紙から切り取る。動物のうしろに針金をつけて、あらかじめ用意された巨大な額縁ともいえる絵本型の支持体に、参加者全員でとりつけていく。額縁からはみ出すものがあっても構わない。平面空間をより3次元的につくっていく作業をしながら物語を各々に考えていくことにする。大きな絵本は各自は持ち帰れないが、絵本の世界に入り込んだ自分の姿もいっしょにモノクロ写真に記録をおさめ、描いた動物たちとともに持ち帰ってもらう。

■「ながーい紙にかく・絵巻物」(講師:岡田毅志)8月20日開催予定

●小学1〜3年/長いものを考えて描く。
 長い紙がある。長い物を考えて描いてもらう。1年生はクレパスや絵の具で、2、3年生は絵の具だけで。 普段家庭や学校ではなかなか広げられない長いかみを基底材にすることで、そこから 普段とは違う発想をすること。さらに長くしてみたい物、長くしたらどうなるだろうという想像力をふくらませるきっかけとする。

●小学4〜6年「できごと絵巻」
 自分が一番好きな時間、気に入っている場所のこと、夏の出来事など、何か1つを絵 巻にして描いてもらう。数日分でも1時間分でもいい。「絵や文章をかいたり、写真、切 符、地図やパンフレットをはったり、これをみればすぐにわかる」大切な出来事を未来に伝える手段ができる。夏の経験を中心に自分が個人的に気に入っている「物事・時間」を絵巻物にすること で個人の主観的なことが客観化される。それは人に見せなくても本人の自信となり、 また趣味的ではあるが喜びとなるだろう。

■「写真の外側を想像してみよう」(講師:河口龍夫)8月21、22日開催予定

 一枚の写真に映っているフレームの外側にはなにがあるのだろう?どんな風景?どんな人?写真の外側を想像しながら、参加者が見えるものを他の人にも見えるように描いてみる。「見えないもの」と「見えるもの」の関係をさぐっていく。

 多様な価値観が求められるいま、さまざまな事柄に対し柔軟な発想を生み出すためのプラクティスとしても、美術は大きな役割を果たすと考えられる。ものをみつめ、そこに本来あるものの真の姿を追求すること。現実の世界のなかに見えているもの、あるいは見えるものだけにとどまらず、描くという行為を通して想像力を膨らませること。この夏のワークショップでは、参加者と講師が美術館という場で、ともにさまざまなことがらを検証していくことを目指している。
 アーティストたちの考え方やものの見方を借りながら、ワークショップという事業そのもののあり方を試行錯誤しながら確立していこうとする途上に京都市美術館はあるようだ。

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学芸員がつくる(名古屋市美術館)
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