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ルーヴル-DNPミュージアムラボ「セーヴル磁器:18世紀の生活様式」、ルーヴル美術館でお披露目
田中美苗(大日本印刷(株)C&I事業部)
2011年06月15日号
フランス、パリのルーヴル美術館内に、新しくマルチメディアを使った美術鑑賞システムが導入され、2011年6月8日から一般公開されている。公開されているマルチメディア・ディスプレイは、「軟質磁器の製作技法」と「フランス式の食卓儀礼」のふたつで、セーヴル磁器について解説するシステム。ルーヴル美術館内のリシュリュー翼2階にある展示室93と95、ナポレオン3世の居室の入口にあたる場所に展示されている。展示室にはセーヴル磁器の作品が展示されており、実際の作品を鑑賞するだけでなく、その製法やどのように使われたかをマルチメディアを使ってより深く理解することができる。
軟質磁器の製作技法
二つあるマルチメディア・ディスプレイのうち「軟質磁器の製作技法」は、「白い金」とまで呼ばれたヴァンセンヌ=セーヴル磁器製作所の伝統的な磁器の製作工程をアニメーションで解説すると同時に、各工程で使用される材料を展示している。材料には、一酸化鉛や酸化コバルトのような化合物だけでなく、塩や酢のような身近なものも使われているのが興味深い。これらの材料を画面の中に取り込むようなアニメーションの作りになっており、見る人をひきつけている。アニメーションは、フランス語、英語、スペイン語、日本語の4カ国語のいずれかをタッチパネルディスプレイで選択して見ることができ、素地の調合、成形、釉掛け、絵付けの四つの工程も選択できる。ディスプレイの横にはアニメーション中に登場する作品が展示されており、解説アニメーションを見終わった人たちが、あらためて作品を興味深そうに鑑賞していた。
フランス式の食卓儀礼
もうひとつのマルチメディア・ディスプレイ「フランス式の食卓儀礼」では、1757年にルイ15世が催した夜会の食卓で使用された食器セットがアニメーションで再現されている。夜会の食事は、前菜からデザートまで五つのコースに分かれており、一つのコースが終わると一旦すべての食器セットが下げられ、次のコースのセットに入れ替えられる。コースごとに変わる食器の並び方は、幾何学的で万華鏡を見ているようである。なにぶん皿が中心なので皿に料理は盛られていないが、料理に使われたであろう肉や魚、野菜などが描かれた絵画作品が現われて想像力を刺激する。こちらのディスプレイは、ナレーションつきで、フランス語、英語、スペイン語、日本語の4カ国語、および五つのコースとその前のイントロダクション部分を選択して見ることができる。
展示作品の理解を深めるマルチメディア・ディスプレイ
これらのマルチメディア・ディスプレイは、ルーヴル美術館と大日本印刷(DNP)の共同プロジェクト「ルーヴル‐DNPミュージアムラボ」の一環として開発されたもので、日本で開発された技術を使った美術鑑賞システムがルーヴル美術館に導入された画期的な事例といえるだろう。今後も引き続き、ルーヴル美術館へのマルチメディア・ディスプレイの導入が計画されており、観客と作品をつなぎ、より深い理解をうながす新しい美術鑑賞のあり方として期待される。