ミュージアムIT情報

編集プロセスを描くデザイン ──超・情報過剰時代における編集の価値

2008年12月15日号

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 今回は、超・情報過剰時代にウェブの情報を編集することの価値について整理をしながら、オンラインで情報編集プロセスを構築しようとするプロジェクトをご紹介したい。

超・情報過剰時代

 昨年9月のミュージアムIT情報の記事★1のなかで、膨張し続けるデジタル情報量について触れた。われわれが実際に経験可能な限界量をはるかに超えた情報が、さまざまなメディアを通じて日々フローしていく感覚は、読者の皆さまも少なからず実感としてお持ちなのではないだろうか。
 アメリカの市場調査会社IDCによる報告書によると、2007年の1年間に世界で生成・複製されたデジタル情報量は計281エクサバイト(単純計算で500GBのHDD5億6千万個強)、2011年にはその6倍強の1.8ゼッタバイトに達すると見込まれている★2。新たに生成・複製されるデジタル情報量は、ほぼ毎年1.5倍のペースで増え続けており、これは、ムーアの法則とほぼ一致するペースである。
 もうひとつ、超・情報過剰時代の実態を眺める資料として、今年の3月に総務省が公開した「平成18年度情報流通センサス報告書」★3を参照しておきたい。日本におけるさまざまなメディアの情報流通量を定量的に捉えたものであるが、注目したいのは「原発信情報量」「選択可能情報量」と「消費情報量」という3つの指標である。「原発信情報量」とは「各メディアを通じて流通した情報量のうち、当該メディアとしての複製や繰り返しを除いたオリジナルな部分の情報の総量」、「選択可能情報量」とは「各メディアの情報受信点において1年間に情報消費者が選択可能な形で提供された情報の総量」、「消費情報量」とは「各メディアを通じて、1年間に情報の消費者が実際に受け取り消費した情報の総量」である。
 報告書にある図1のグラフからは、興味深い実態が見えてくる。まず、情報の受け手の環境に提供される「選択可能情報量」と、実際に消費された「消費情報量」との差分は年々拡大の一途にあり、われわれが認知可能限界を超えた膨大な情報フローに囲まれながら、そのほとんどを無視しているという実態である。もう一点着目したいのは、オリジナルな情報といえる「原発信情報量」と、情報の受け手に提供される「選択可能情報量」との差分が年々拡大の一途にあることである。情報の編集や複製を基本原理とするインターネットやウェブの性質を反映し、オリジナルの情報が、複製や引用、改変といった操作を加えられてから情報の受け手に届く割合が増加していることを表わしている。

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情報流通量等の推移。平成13年を境に「選択可能情報量」が急増している
出典=平成18年度情報流通センサス報告書 

 

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