2018年06月15日号
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アート・アーカイブ探求

長谷川利行《少女》──透明な実在感「尾﨑眞人」

影山幸一

2014年02月15日号


長谷川利行《少女》1935年, 53.2×41.2cm, キャンバス・油彩, 群馬県立近代美術館蔵
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 妙に静かな“リコー”こと長谷川利行の人物画を偶然Webサイトで見つけた。荒いタッチと強烈な色彩で表わした《汽罐車庫》や《タンク街道》といった構造物の作品と、放浪の画家というイメージがあった利行。しばらく時間が経ったが心に残り、やはり実物を確かめに行かなければ腑に落ちないと、所蔵館である群馬県立近代美術館へ行ってみることにした。
 長谷川利行の《少女》(群馬県立近代美術館蔵)は展示室の中ほどにあった。思っていたより大きく、ゴツゴツと荒れた絵肌の上に、素っ気ない線描で描かれた乳房がアンバランスな少女。絵の外側にエネルギーが発散されていると思っていたが、実際に絵の正面に立つと、意外にも乾いてひび割れた絵具の中に吸い込まれるように、絵の内側へ引かれていった。イラスト風のポップな画面だが、余白と絵具のかすれから枯れた美が伝わってくる。閑寂なひっそりとした侘(わび)の世界観だ。うつろに消えそうでありながら、温かみのある少女は、性より命の存在を感じた。本当に利行が描いたのだろうか。
 京都市美術館の学芸課長、尾﨑眞人氏(以下、尾﨑氏)に《少女》の見方を伺いたいと思った。尾﨑氏は長年日本美術史を研究し、近代美術や現代美術にも詳しく「都市生活における『不在』或いは長谷川利行の『半塗り』」(図録『歿後60年 長谷川利行展』)や「長谷川利行が愛した人、利行を愛したひと」(図録『生誕100年記念 長谷川利行展』)を書いている。利行の生誕地でもある京都へ向かった。


尾﨑眞人氏

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