アート・アーカイブ探求

斎藤義重《作品7》──二重構造性が示す実存「千葉成夫」

影山幸一

2014年03月15日号


斎藤義重《作品7》1960年, 91.0×130.0×5.4cm, 合板・油彩, 京都国立近代美術館蔵
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ドリル絵画

 絵画か、レリーフか。近づいてみると、板を電気ドリルで削りながら描いた作品であった。この惑わす作品を制作したのは「サイトウギジュウ」こと斎藤義重(よししげ)である。このギジュウの生み出した“ドリル絵画”とも言える独自の作品群から、第6回サンパウロ・ビエンナーレで国際絵画賞を受賞した《作品7》(京都国立近代美術館蔵)について探求してみたいと思った。
 《作品7》は全面が赤く、何かを描いているというより石壁か、朽ちた木がそのまま展示されているような素っ気なさがあり、赤色の強さゆえか長時間観賞したい作品ではないが、そうかといって見過ごせない深遠な空気を湛えている。少し佇んで見ていると激しいと思えていた表面は、意外にも細部が丁寧につくられており、凹んだ線や穴が絵として見える感覚は新鮮だった。艶のない赤色には、中間色が点在しており多様なイメージを想起させ楽しい。
 この“ドリル絵画”《作品7》について、1978年東京国立近代美術館で「斎藤義重展」を担当した美術評論家の千葉成夫氏(以下、千葉氏)に話を伺ってみたいと思った。千葉氏は著書『美術の現在地点』で斎藤についての作家論を書いている。


千葉成夫氏

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