アート・アーカイブ探求
久隅守景《夕顔棚納涼図屏風》軽みの奥深さ──「松嶋雅人」
影山幸一
2011年02月15日号
美術のアーカイブ
Googleが2月1日から「Google Art Project」をインターネットに公開した。世界的にも名高い17館の美術館の絵画作品1,000点以上をデジタル画像で鑑賞できる。実際に街を歩き美術館を訪れたように、体感できる美術鑑賞で楽しい。「デジタルでこんなに見せてしまっては来館者が減ってしまうのではないか」というような危惧は感じられない。美術館へ行ってみたくなる。「Art Project Behind the Scenes」を見たら、美術館のオープンなこと。自転車に載せたカメラで美術館内を移動しながら撮影している。日本ではなかなか美術作品の画像公開が進まないが、こういう外圧があれば少しは公開数も増え、美術館ももっと開放的になってゆくのだろうか。Googleの波にのみ込まれる前に、日本の美術を日本の技術で世界に発信できるように期待したい。国立国会図書館の大規模デジタル化事業が来月2011年3月末に終わり、これより日本の知のアーカイブは市民権を得ていくのだろう。知と美の連携はないのか。美術のアーカイブはどうなっていくのだろう。
国宝なの?
そんな期待と不安の交錯する思いで画集を見ていたら、思わず引き込まれてしまった作品があった。この絵のどこが国宝なの。国宝から想像する威厳や重厚さといったものがまったく感じられない。それらとは正反対の絵。描かれた人物たちは気持ちよさそうになごんでいるのだが。そのうえ初めて見る作家名、誤って国宝に指定されたのかとも思えてくる。久隅守景(くすみもりかげ)の《夕顔棚納涼図屏風》(以下、《納涼図》)である。東京国立博物館(以下、トーハク)に所蔵されている。久隅守景に関する本も多くは出版されていなかった。謎はすぐには解決されない。やはり日本の美術は深遠である。2007年に『日本の美術』(至文堂刊)が久隅守景を特集しており、守景の全体像をとらえているようだった。この著者であり、編者である松嶋雅人氏(以下、松嶋氏)に《納涼図》の魅力と見方を伺ってみたいと思った。松嶋氏は《納涼図》を所蔵するトーハクに勤務していた。