[提供:仙台コレクション]

発行所:カシカ舎
発行日:2024/04/06
公式サイト:https://x.com/sencolle1/status/1777663649147945169

「仙台コレクション」の活動については、本欄で何度か紹介したことがある。伊藤トオルを中心とした仙台在住の写真家たちが、2001年から続けてきたプロジェクトで、市内の建物、街路、橋などを、カメラアングルや画面構成をほぼ同一にして黒白フィルム使用の中判カメラ(現在はデジタルカメラ)で撮影し続けてきた。参加者の出入りはあるが、現在のメンバーは伊藤のほか、片倉英一、小滝誠、斉藤寿、佐々木隆二、松谷亘の6名である。その撮影枚数が10,000枚に達したのを記念して、「仙台コレクション 1万枚のメッセージ」展が、昨年(2023年)1月〜3月に仙台文学館で開催された。本書はその10,000枚の中から100枚を厳選して箱におさめた限定版写真集である。

これまで展覧会で見てきた「仙台コレクション」の写真は、展示点数があまりにも多くて、個々の写真の細部まではなかなか目が届かないところがあった。今回のように100枚という数に絞ると、それぞれの写真に写し出された光景がくっきりと立ち上がってくるとともに、その写真を実際に撮影した写真家一人ひとりの息遣いに触れるような生々しさを感じた。反面、「仙台コレクション」がこれまでずっとこだわり続けてきた、「詠み人知らず」に徹する匿名性がやや薄れてしまったともいえる。10,000ページの写真集を作るのは、さすがに難しいかもしれないが、ページ数の多い、厚みのある写真集におさめたときに、このプロジェクトがどんなふうに見えてくるのかには興味がある。これまで各展覧会で展示してきた写真のプリントを、どのように保存していくのかという問題を含めて、この貴重なプロジェクトの持つ可能性を、さらに大きく展開できるような活動を続けていってほしいものだ。

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執筆日:2024/05/05(日)