会期:2024/04/20~2024/05/11
会場:青山学院大学ジェンダー研究センターギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.aoyama.ac.jp/center105/2024/event_20240328_3
アジア各国のフェミニズム・クィア・ジェンダーの問題に取り組む6つのコレクティブを紹介した企画展、「共創の場:ジェンダー問題とアジアのアート・コレクティブ」が青山学院大学ジェンダー研究センターギャラリーで開催された。本企画で紹介されたコレクティブはマイノリティの普遍的な権利主張や共助を行なう社会的・文化的コミュニティを創造し、アーカイブの構築、方法論の共有をさまざまなかたちで模索する。女性の労働や政治参入が提議されウーマンリブ運動が盛んになった第二波フェミニズム期の団体から、国境を超えてクィア・ディアスポラの経験を共有する現代のコレクティブまで異なる実践の在り方がそこにあった。
クィアにまつわる本やZINEを紹介する移動式図書館を運営するクィア・リーズ・ライブラリー(QRL)は、香港当局の検閲的な措置によって公立図書館の本棚からLGBTQ+に関する児童書が消えた問題に端を発して活動を始めた。また、都市でのキャンプとワークショップを通して人々の交流や技術の交換を図るイースト・アジア・エコトピア(EAE)は、大規模な再開発事業に起因する環境破壊への発議をきっかけに興った活動だ。どちらも市街地でのポップアップやゲリラを通して、実践的な技術の共有と市民が問題意識を知る機会をつくるアクションを継続的に行なう。刺繍でのリメイクによってユーモアを効かせた古着を制作するItazura NUMANも幅広い層が楽しめる表現を通して参加や発言ハードルの緩和に寄与する活動を行なう。これらの団体はアイディアを広く共有するワークショップや空間に囚われない活動のあり方を模索し、その表現媒体もZINE、洋服、版画など複製可能で流通しやすいメディアを採用する。マレーシア・サバ州より参加しキーイェップ村クラフトハウスとしてクレジットされている職人が集まる工房もまた、植物を用いたカゴや魚籠を作って生計を立てている人々が国際的に活動する木版画コレクティブ、パンクロック・スゥラップからの支援を受け2018年に設立された施設であり、職人を育成する技術の交換場としてハブになることで地域の雇用を創出する持続的な環境作りが営まれる。
より実践的な表現を通して女性をエンパワーメントし、ロンドンと中国を拠点に活動するVaChinaも本展で紹介されていた。国境を超える中国系移民やクィア・ディアスポラのフェミニズムコミュニティを構築するVaChinaの活動の中核を担う公演「膣の道」は、性体験や性的暴力のカミングアウト、セックスワーカーの証言を上演することで、“個人的な”問題として公序良俗によって締め出され不可視化される、プライベート領域に蓄積した身体の経験を分有・共有する試みだ。また、日本のウーマンリブ運動における先駆けとなったリブ新宿センターは、共同生活を営む数名を中心に女性像のステレオタイプからの解放と社会的地位の向上を目指すポリティカルな活動を展開し、旧優生保護法の改悪やベビーカーを制限する消防法への抗議、家庭内暴力など多くの問題を訴えた。その範囲は街頭デモへの参加やビラ配り、機関誌の発行、ミュージカル公演『女の解放』(1974-1980)など多岐にわたり、後年に資料保存会が発足されることでその活動がアーカイブされることとなる。
これらのコレクティブが構築するネットワーク(網)は言論と技術を共有・保存しながら、同時に誰もが自分らしくあり続けるための共助のあり方を示す。コミュニティの外へとその影響が広がっていくことで、この社会を組み替える可能性が拓かれていくように感じた。
鑑賞日:2024/05/01(水)