会期:2024/08/01~2024/08/15
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3[東京都]
公式サイト:https://www.2121designsight.jp/gallery3/beyond_form/

なんて詩的なアプローチをするのだろうと思う。イッセイ ミヤケのメンズブランド「IM MEN(アイム メン)」の新作バッグ「GUSHA GUSHA」と「KUSHA KUSHA」を紹介した展覧会であるのだが、テーマとなっていたのはバッグという物より、その素材のエッセンスだった。最初にこれらのバッグに触れられるコーナーが設けられていたため、私も手に取ってグシャグシャ、クシャクシャと感触を確かめてみた。「GUSHA GUSHA」はやや厚くハードな質感で、こねたり潰したりすることで表情や形態が大きく変わった。一方、「KUSHA KUSHA」は薄くソフトな質感で、握ったり丸めたりすることでシワや形状がたおやかに変化した。いずれも触れているうちに、粘土遊びのような楽しさが湧いてくる。このように手から形が本能的に生まれる、明確な輪郭や定義を持たない「かたちなき野性」をテーマとして、本展では5人の作家に創作を委ねたのである。

展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3[© ISSEY MIYAKE INC. Photo: Masaya Yoshimura (Copist)]

展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3[© ISSEY MIYAKE INC. Photo: Masaya Yoshimura (Copist)]

本展のディレクター兼参加作家は空間デザイナーの吉添裕人、ほかの参加作家はアーティストの木下理子、同じく中田愛美里、プロダクトデザイナーの鈴木元、華道家の渡来徹である。これらのバッグを題材に、鈴木は型に押し固めて、暮らしのなかで使うさまざまな種類の器を提案。整然とした花器や小物入れに様変わりしながらも、表面に深く刻まれたシワが個性を主張する。中田は非常に叙情的な映像作品を発表した。中身を取っ払った「役の入れ物」として、これらのバッグが犬や人間、草木に変身し、その一生を試すというショートストーリーである。どんな「役」になっても自由もあれば不自由もあり、また喜びもあれば哀しみもあるというメッセージが、我々の生き方への示唆となっていた。

本来、あくまで新作バッグの発表であるはずなのに、本展は作家の創造性を主題とする。そのうえで、この2種のバッグがお仕着せのプロダクトではないことを伝えるのだ。ユーザーがライフスタイルや好みに合わせて、形も、表情も、使い方も、自由に決められるし、決めてほしいと提案する。そうした創造力を求めるプロダクトを発表するところが、実にイッセイ ミヤケらしい。

展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3[© ISSEY MIYAKE INC. Photo: Masaya Yoshimura (Copist)]

展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3[© ISSEY MIYAKE INC. Photo: Masaya Yoshimura (Copist)]

鑑賞日:2024/08/09(金)