会期:2024/09/05~2024/09/08
会場:東京大学情報学環オープンスタジオ[東京都]
公式サイト:https://know-nukes-tokyo.com/event
「あたらしい」と謳うだけあって、確かに原爆に関する展覧会としては新しい試みだった。本展を企画したのは、核兵器の廃絶を目指す大学生らのグループ「KNOW NUKES TOKYO」である。現代の問題意識として、広島・長崎に行かなければ原爆の恐ろしさを知ることができないこと、また昔の話のように思えることなどが挙げられるという。およそ40年以上前になる私が子どもの頃は、被爆者がいまよりもずっと多く現存した時代で、毎年8月になれば必ずテレビや映画などのメディアで原爆にちなんだ特集が組まれたものだった。原爆投下から80年も経とうとする今では、そうした動きもわずかになり、遠い昔の出来事に思えるのは仕方がないことなのかと改めて実感する。だからこそ、若い世代の視点で、核兵器の脅威を伝える活動には意義があると感じる。
展示作品は、東京大学大学院情報学環の渡邉英徳研究室に協力を得て実現したアートやテクノロジーを駆使した内容とのことで、広島・長崎の原爆資料館とは角度を変えたものばかりだ。現在、世界各国が有する12,000発の核兵器について坦々と論理を述べていく映像作品「核の脅威」や、ARを用いた「もしも渋谷スクランブル交差点に核が落ちたら」、場所などを入力して核投下による被害規模を予測する「核投下シミュレーター」、AIに核兵器について質問ができる「AIと核について話そう」など、広島・長崎の体験だけではなく、現在に軸足を置きながら、先端技術による表現に挑んでいた。しかしこれらを通してどこまで心が動かされるのかについては別だ。期待が大きかったせいか、正直、そこまでの驚きはなかった。それこそ広島・長崎の原爆資料館で昔に観た、生々しい写真や資料の方が衝撃はずいぶん大きかったし、何なら、漫画『はだしのゲン』の方が得られるものはたくさんあったように思う。
その要因は、コンピューター上で作られたコンテンツゆえのリアリティーの希薄さなのか。あるいは、世代間の違いもあるのだろうか。とはいえ、こうした運動に心から応援したい気持ちはあるので、次なる展開に期待したい。
鑑賞日:2024/09/08(日)