会期:2024/09/13~2024/09/16、2024/09/20~2024/09/23
会場:アクシスギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.axisinc.co.jp/news/2024/948.html

とても怖かった。想像以上に怖かった。ただ、暗闇をひとりで歩くだけでこんなにも怖いものかと身をもって知った。「畏怖(if) お化けのいないお化け屋敷、感覚と恐怖をデザインする」は、デザインギャラリーで催された体験イベントである。企画・デザインを手掛けたのは、山中一宏、太田琢人、竹下早紀の3人のデザイナーだ。タイトルどおり、似てはいるが、これはいわゆるお化け屋敷ではない。突然、作り物のお化けが目の前に現われて驚かすという仕組みではないからだ。基本、何も出てこない。出てこないからこそ、それがかえって恐ろしさを増幅させたのである。

会場入口 AXIS Gallery[© AXIS Media]

人間は五感のうち8割以上を視覚に頼っていると言われる。暗闇では、その視覚情報がいっさい断たれた状態となるため、自然と身の危険を感じたり不安になったりするのだという。一般のお化け屋敷での恐怖は、言わばびっくりさせられる恐怖だ。作り物のお化けは確かにおどろおどろしいが、それ自体が怖いというより、むしろ突如現われることの恐怖の方が大きいからである。それに対して、このイベントでの恐怖は、真に暗闇における恐怖だ。体験してみてよくわかったのだが、真っ暗闇では前も見えなければ、そこに空間が広がっているのかさえ判別がつかない。だから、足を踏み出していいのか戸惑う。しかし会場にいったん入ったからには引き返すわけにもいかず、右手側にある手すりの感覚だけを頼りに、私は自分を鼓舞して、屁っ放り腰になりながら恐る恐る前へと進んだのである。何かが出てくるのではないかという疑心暗鬼にずっと駆られながら……。

[© AXIS Media]

ネタバレになるが、お化けは出てこないものの、途中、ある音や物に触れる瞬間がある。最初はビクッとするが、むしろ私は何かの感覚情報が得られたことにホッとしたのだった。なぜなら何も起きないことがかえって、何かが絶対に起きるはずという妄想をどんどん生んでしまったからである。目に見えない恐怖を誇大化させるのは、つまるところ、自分自身であることを思い知る良い機会となった。刺激的で貴重な体験ではあったが、やはりお化け屋敷に入るのはもう二度とごめんである。

鑑賞日:2024/09/21(土)