会期:2024/11/01~2024/11/30
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000837

ADC(東京アートディレクターズクラブ)による「日本のアートディレクション展」が今年も開催された。2024年度ADCグランプリを受賞したのは、岡崎智弘個展「STUDY」(クリエイションギャラリーG8)の映像、展示である。そもそも、これは第25回亀倉雄策賞受賞記念(三澤遥と同時受賞)として開催された展覧会で、両賞を独占した岡崎智弘は日本のグラフィックデザイン界における時代の寵児になったのだなと改めて思う。が、私は本人の人柄や仕事ぶりを知っているが、そんな雰囲気のデザイナーではない。あくまで自分の創作欲や探究心にただマイペースに没頭している人である。むしろ、その純真さが多くの人々の共感を呼んだのかもしれない。

展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー [写真:藤塚光政]

さて、ADC賞受賞作品のなかで印象的だったものを二つ紹介したい。ひとつは、沖縄セルラー「わたしたちが、絶滅危惧種になるまえに。」の新聞広告である。これは「沖縄タイムス」と「琉球新報」に掲載された広告で、前者は「海」、後者は「陸」をテーマに、沖縄に生息する希少な動植物を原寸大のイラストで描いたものだ。つまり「わたしたち」とは、絶滅危惧種やその危機を抱えている種を指す。原寸大であるため、例えばイリオモテヤマネコは前部だけ、ザトウクジラは目だけなど、インパクトのあるトリミングの仕方となっているのだが、もっと目を引くのは広告枠の取り方だ。通常、新聞広告は「2連版」や「全5段」「2段1/2」「突き出し」などの呼び名で枠のサイズや場所が決まっており、それぞれに異なる広告が入る。しかし同広告の場合、見開き(2連版)中に飛び飛びに配置された広告枠を全て占拠し、それらを一体として捉え、歪なフレームのなかに動植物のイラストを収めたのである。そうすることで記事面と広告面の二つのレイヤーがくっきりと浮かび上がり、まるでうごめく動植物の上に記事が載っているように見えるなど、主従の関係が逆転するような錯覚に陥る。このありそうでなかった広告手法に思わず舌を巻いた。

展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー [写真:藤塚光政]

もうひとつは、本田技研工業「The Power of Dreams How we move you.」のコマーシャルフィルムである。車やバイクに乗った人間がいきいきと疾走する様子を描いた映像なのだが、肝心の同社の商品である車やバイクのいっさいは消えている。その意図として「もっと遠くへ行きたい」など“Move”に対する根源的な欲求を表現するため、人間を中心に描いたというが、これも逆転の発想だ。あえて姿形をなくすことで、存在をかえって際立たせている。旧来の広告媒体であってもまだやり尽くせていない手法があることを、この二つの受賞作品を通して思い知る良い機会となった。

展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー [写真:藤塚光政]

鑑賞日:2024/11/05(火)