会期:2025/02/21~
会場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督・共同脚本・製作:ブラディ・コーベット/共同脚本:モナ・ファストヴォールド
出演:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ
2024年/アメリカ、イギリス、ハンガリー/ビスタサイズ/215分/カラー/英語、ハンガリー語、イタリア語、ヘブライ語、イディッシュ語/5.1ch/日本語字幕翻訳:松浦美奈/原題『THE BRUTALIST』/配給:パルコ ユニバーサル映画/映倫区分:R-15+
公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/the-brutalist

ハンガリー・ブタペスト出身で、バウハウスのデッサウ校で学んだ才能ある建築家がナチスの強制収容所から逃れ、米国へと渡り、その才能を再び開花させていく数奇な半生……。というと、まるでノンフィクションのようであるが、フィクションなのである。とはいえ、バウハウス閉鎖後、実際にヴァルター・グロピウスをはじめ多くの教授陣や卒業生が米国へ亡命しているため、大なり小なりあるにせよ、彼らがたどったかもしれない道を描いているようにも映る。自由を求めて身一つで米国の地を踏んだ主人公ラースロー・トートが、最初に頼ったのは従兄弟だった。従兄弟が営むインテリアショップのために、ラースローはオリジナル家具を自作するのだが、いかにもバウハウスらしいカンチレバー式のスチールパイプ家具は「三輪車みたい」と笑われる始末である。それでも従兄弟のつてで、ある大富豪の家の書斎をリフォームする仕事を得る。それを機に紆余曲折の展開がありながらも、その大富豪に才能を見込まれ、生涯をかけて臨むことになる建築を設計していく。

[© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures]

ここまでが前半で、インターミッションを挟み、後半ではさらに波乱に満ちた半生が描かれる。生き別れになっていた妻と姪を米国にようやく迎え入れることができたのだが、妻は足を悪くして車椅子生活となっていた。聡明な妻が加わったことで浮き彫りになる大富豪家との複雑な人間関係、建設の中断、裏切り、人種差別、ドラッグ依存、性加害、イスラエルへの移住計画などさまざまな事態に対し、ラースローは悶え続け、次第に心を蝕まれていく。だからこそ、生涯をかけて臨んだ建築─丘の上のランドマークとしての「マーガレット・ヴァン・ビューレン・コミュニティセンター」(集会場)の完成が全ての救いの象徴のように見えるのだ。その独創的なブルータリズム建築の実体が本作の最後に明かされるのだが、それはナチスの迫害を受けた者にしか作れない壮絶なコンセプトに基づいており、心が打ち震えてしまった。

[© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures]

[© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures]

鑑賞日:2025/02/28(土)