会期:2025/03/19~2025/03/31
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[東京都]
公式サイト:https://www.arflex.co.jp/gioponti_exhibition_japan/
ジオ・ポンティと聞いてまず思い浮ぶのは、世界で一番軽い椅子として有名な「スーパーレジェーラ」である。極限まで削ぎ落とされた三角フレームの木材と手編みの籐の座面で構成されたその椅子は、重量わずか1,700グラム。超軽量をアピールするヴィジュアルとして、少年が片手で軽々と持ち上げている様子を写したポスターが有名である。だが、これは彼の仕事のごく一部に過ぎない。 本展は、「イタリアモダンデザインの父」と称されたポンティのおよそ60年にわたる仕事を紹介する内容だった。陶磁器メーカー、リチャード・ジノリのアートディレクターとして活躍しつつ、プロダクトデザイナーや建築家としても才能を発揮し、かの有名な建築雑誌『ドムス』を創刊して初代編集長を務めるなど、実に多彩な分野で功績を残したことがうかがい知れる。本展タイトルの「軽やかに越境せよ。」とは、彼がこのように分野に捉われず仕事をこなしたことや、時代の潮流だったウィーン分離派やイタリア合理主義、モダニズムなどのイズム(主義)に留まることなく、自身の表現を貫いたことを指す。ドキュメンタリー映像も併せて鑑賞すると、つまるところ彼を突き動かしていたのは、イタリア人特有の職人魂だったのではないかと思えてくる。いつでも、どんな場面でも、手を動かしてモノを作ることへの喜びに満ちた人生だったのだ。
会場壁面の大きなパネルでは年表に沿ってポンティの生涯を振り返る一方、中央では彼が自宅のためにデザインしたというアームチェアやコーヒーテーブル、ブックシェルフ、タイルなどが展示されており、まるでリビングの一角を思わせるインスタレーションとなっていた。明るく鮮やかな色使いや遊び心にあふれた造形、シンプルで機能的な構造など、それらがまさにイタリアモダンデザインを体現したものだと感じるのは、彼が「父」であるから当然といえば当然である。つまり軽やかに越境した結果、ポンティの手から生み出されてきたものこそが、ひとつのイズムを形成したのではないか。それは現代においても古びることなく、人々をポジティブな気持ちにさせる。
※今後、特設の公式サイトにて会場の360度ウォークスルー撮影画像を公開予定。
展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[Photo: Satoshi Nagare]
展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[Photo: Satoshi Nagare]
展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[Photo: Satoshi Nagare]
鑑賞日:2025/03/22(土)