
会期:2025/08/21~2025/09/07
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール[東京都]
※2025/09/10~2025/09/21、大阪髙島屋 7階グランドホールに巡回
公式サイト:https://www.stiglindberg-exhibition.jp/
スティグ・リンドベリがデザインしたグスタフスベリ磁器工房のアンティーク食器を、私も何客か持っている。もう20年以上前、北欧家具や雑貨の第一次(?)ブームがやってきた頃、小さなインテリアショップで一目惚れして買い求めたのだ。それらは彼の代表作である[ベルサ]と[サリックス]シリーズのカップ&ソーサーで、アンティークのためか食器にしては結構、高額であったことを記憶している。そして一目惚れしすぎたためか、高かったせいか、結局、日常的に使うことにはためらいを覚え、食器棚にずっとしまいっぱなしとなっている。それでも持っているだけで幸せを感じる食器であることは変わりがなく、いわば、家宝的な存在になってしまった。
[ベルサ]装飾、[LL]モデル/ディナーセット(1957/モデル、1960/装飾)リンドベリ家コレクション[© Stig Lindberg Photo: Per Myrehed]
本展は初期から晩年までの代表作が約300点集結という前触れどおり、充実した内容で、心ときめきながら鑑賞した。展示の序盤には日本でよく目にする食器シリーズが並んでいたのだが、中盤からは見たことがない炻器でできた鍋やフライパンなどのクッキングセット、ファイアンス(錫釉陶器)の水差や花入などが登場し、リンドベリの新たな一面を知ることができた。だが、この辺りまでは陶磁器デザイナーの仕事であることが想像できる。意外だったのはアートウェア、フィギュア、炻器の彫刻、テキスタイルなど、陶磁器デザイナーの枠を超えた分野でも活躍していたことだ。
[カーニバル]シリーズ/フルート奏者と女の花入(1957-1962年頃)リンドベリ家コレクション[© Stig Lindberg Photo: Per Myrehed]
こうなると、彼はもはや陶芸家と呼んでもいいだろう。特に人物と動物をモチーフにしたフィギュアや、手びねりで制作された炻器の彫刻などは、愛らしさとユニークさとがないまぜになった雰囲気を醸し出し、彼の豊かな独創性を窺い知ることができた。それにしても、この雰囲気はどこかで見たことがあると思ったら、ユーモラスな動物の彫像で有名な陶芸家のリサ・ラーソンを、1954年当時、グスタフスベリ磁器工房のアートディレクターだったリンドベリが同社に誘い入れたという事実を知って、腑に落ちた。そう、リサ・ラーソンの陶芸作品に相通じるものがあったのだ。終盤では日本との関わりについても紹介されていて嬉しくなった。交流はあまりなかったと言われるが、なんと柳宗悦とのツーショット写真まであり、思わず驚きの声を上げてしまった。本展を通してそんなさまざまな発見があったおかげで、ますますリンドベリのファンになったことは言うまでもない。
[スプリンガレ]シリーズ/大きな馬(1958)リンドベリ家コレクション[© Stig Lindberg Photo: Per Myrehed]
《スカートに花を飾った女》(1940年代)リンドベリ家コレクション[© Stig Lindberg Photo: Per Myrehed]
鑑賞日:2025/08/23(土)