会期:2025/08/26~2025/12/07
会場:資生堂ギャラリー[東京都]
公式サイト:https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/

髙田安規子・政子による資生堂ギャラリーでの個展「Perspectives この世界の捉え方」は、二人が資生堂企業資料館と資生堂アートハウスを訪れた際に目にした、『易経』の一節から着想を得ている。

「至哉坤元 万物資生(いたるかなこんげん ばんぶつとりてしょうず)」(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる)

万物がすべての根源である大地の徳から生まれるという思想を手がかりに、作家は宇宙法則や自然摂理、歴史の集積といった生命の根源にある概念を巨視的/微視的な視点から往還させながら世界の可視化を試みている。

特筆すべきは、物理学・生命科学・歴史学など多分野にまたがる思索をもとに、独自の尺度と創造力によって捉えられた「世界」の像である。《Electromagnetic wave》(2025)では電磁波の模式図をキルトのパッチワークで示し、《Strata》(2022)では五角形の書棚に鉱物や書物が体系的に収められる。かつて資生堂で使用されていた鏡を含む大小200を超える鏡を並べた幻想的なインスタレーション《Relation of The Parts to The Whole》(2022)は、鑑賞者の姿を無数に分断し、感覚的に補完された曖昧な身体像を浮かび上がらせる。このようにして作品は部分と全体、個と環境の連関を繋ぎ、分断した世界の捉え直しが図られる。

作家が扱うファウンドオブジェは、日用品から考古資料、骨董品まで多岐にわたる。繊細な手仕事や造形によって生まれたそれらを媒介に、あまりに巨大で捉えがたい「世界」という知覚対象を極小の単位で確かめようとする。物体と概念のスケールを自在に操るその手法は、未知の知や共存の可能性を示し、現実と非現実の狭間にスペクタクルな光景を描き出す。髙田姉妹の作品に通底するのは、物体と概念のスケールを自在に操り、鑑賞者の内に壮大な感性を呼び覚ますような効果である。あるいは、自然と共にある想像力を呼び覚ます静謐な祈りのような情緒とも言えるだろう。

 

★──展示キャプションより。https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/

鑑賞日:2025/10/03(金)