1983年の創業以来、『ロックマン』、『ストリートファイター』、『バイオハザード』、『逆転裁判』などの人気シリーズ生み出してきたカプコン。大阪、名古屋、鳥取会場での巡回を経て、現在東京会場で開催されている「大カプコン展 ─世界を魅了するゲームクリエイション」は、そんな同社の歩みを振り返りつつ、そのクリエイティブについて解説・体験する内容となっていた。

会期:2025/12/20〜2026/2/22
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO[東京都]
公式サイト:https://daicapcomten.jp

前編より)

カプコンは80年代より北米や海外の市場を意識している。同社による世界観のパッケージングは、1994年にハリウッド映画として『ストリートファイター』が公開されたことからもわかるように、早くから成功を収めることになった。このたびの展示はカプコンの代表作のキャラクターたちがパレードのように歩いていく映像が入口に流されていたが、こうした演出も、同社のゲームの中心にはキャラクターがいることを自覚しているがゆえのものではないだろうか。

もちろんこうした意匠的な側面だけではなく、造形における同シリーズの発明も重要だ。『ストリートファイター』シリーズのキャラクターに見られる、マンガのようなデフォルメを行ないながらリアルに仕上げるスタイルは、90年代のはじめ競合他社でもあるSNKの格闘ゲームや、寺田克也といった一群の描き手を含め「マンガリアル」と呼ばれていた★5

あきまんはそんなマンガリアルの源泉の一例として、マンガのリアリズムを一段引き上げた大友克洋の存在を挙げている。また、80年代にそれまでの官能劇画が、雑誌『レモンピープル』に代表されるような美少女コミックに変化したことに言及しているのも、象徴的な証言だろう★6。性描写を伴なうこれらのマンガは、必然的にある程度身体を写実的に描かざるをえなくなるのだが、その頭部は写実性とはほど遠いスタイルで描かれる。このように異なる絵柄が共存するようなスタイルが同時多発的に登場したことにあきまんは関心を寄せており、そういった流れに生頼範義といったSF小説などで活躍する写実系の描き手の影響をより濃厚に反映したのが、マンガリアルというスタイルなのだ。

このようにマンガリアルとは、マンガとイラストレーション双方の影響を咀嚼したスタイルであり、その点においては日本のイラストレーション史にとっても重要な潮流であるのだが、このスタイルは『ストリートファイター』シリーズの世界観にも極めてマッチしていた。なぜならそれによって、筋骨隆々の身体を迫真性をもって描くことができるからである。展示されていた社内資料「あやしい美術解剖図」を見ると、そこには骨格や筋肉について解剖学的に図説されており、こうした技術がカプコンの内部でも重視されていることがうかがえるだろう。

「『らしさ』を描く ─ キャラクター造形の秘伝書 ─」[筆者撮影 ©CAPCOM]

『ストリートファイター』シリーズは「日本のキャラクターコンテンツの文脈を世界化するような様式性を編み出した★7」とも評されるが、それに重要な役割を果たしたのが、多様な視覚文化を綜合したマンガリアルだったのである。そして「世界化」という点でそれを成し遂げたのは、なにも『ストリートファイター』だけではないだろう。『バイオハザード』もハリウッドで映画化されているし、『モンスターハンター ワールド』(2018)は全世界で2180万本を売り上げた。このたびの展覧会ロゴにはドット絵で描かれた世界地図があしらわれているが、そのデザインが象徴するように、制約の多いドットから始まったカプコンのゲームは、いまや世界中に広がっているのである。

 

★1──「対談 あきまん×村田蓮爾 九〇年代初頭の『マンガリアル』」(『季刊エス』27号、飛鳥新社、2009、87頁)
★2──多根清史、宮昌太朗、志田英邦、結城昌弘取材・文『ゲームの流儀』(太田出版、2012、248-249頁)
★3──ファミ通責任編集『カプコンビジュアルワークス 2004-2014』(KADOKAWA、2015、119頁)
★4──中川大地『現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から』(早川書房、2016、235~236頁)
★5──前掲★1。
★6──同前。
★7──前掲★4。

参考文献
・大カプコン展 —世界を魅了するゲームクリエイション『大カプコン展公式図録』(読売新聞社、2025)
・「ミリオンセールスタイトル」(『株式会社カプコン』、https://www.capcom.co.jp/ir/business/million.html

鑑賞日:2026/01/23(金)