
会期:2026/01/06~2026/03/10
会場:日本民藝館[東京都]
公式サイト:https://mingeikan.or.jp/special/ex202601/
プロダクトも工芸品も、世の中に流通するモノには模様があるものが多い。それが様式化された伝統模様であれば文様ともいう。模様の定義について、かつて柳宗悦は「模様は具象的なものを抽象化したもの」と述べていた。「或対象を捕え、その美しさを結晶させ、単純化させ、法的な世界にまで煮つめるとき、模様に熟する」と。そもそも縄文土器に種々さまざまな模様が施されているように、人類が何かの道具を作り始めたときから模様は存在した。水や食糧を保存したり煮炊きしたりするための道具に、機能性だけを追求するのであれば模様は本来不要なはずであるが、そこにはダイナミックな模様が付けられている。それらの模様には狩猟や採集への祈り、子孫繁栄への願い、集落への帰属意識などが込められていたと考えられており、人類にとって必要なものだったのだ。

深鉢、長野県南安曇郡小倉村出土(縄文時代、BC2800)、52.7×39.0cm、日本民藝館蔵
特に伝統的に作られてきた工芸品と模様とは切っても切れぬ関係にある。機械で大量生産されるプロダクトとは異なり、工芸品は材料や工程の関係から必然的に抽象模様を招くことがあるからだ。例えば、織物は経糸と緯糸を交差して織るものであるため、その交差に沿って幾何学模様が表われやすい。布の目を追って針を刺していくこぎん刺しも同様だ。陶磁器であれば、飛び鉋によって表われる連続模様などは技法ありきである。そうした観点がありつつも、柳はむしろ「具象に根差して抽象に熟したもの」に注目する。
本展の特集では、久留米絣などの絣織物やこぎん刺し衣装のほか、アイヌ民族の衣装、陶磁器では流し釉や英国のスリップウェア、また北米やポリネシアなどに暮らす先住民族の工芸が紹介されていた。柳が日本や朝鮮半島以外のプリミティブアートも収集していたことには驚かされたが、民藝の視点で見れば、世界中のどこにでもお宝は眠っているということである。一方、併設展では、陶磁器に描かれた植物文様や染織に表われた吉祥文様、民藝運動の作家たちによる動物文様、西洋陶磁器の「藍絵」と呼ばれる染付や色絵など具象模様が紹介されており、その対比について考えさせられる構成となっていた。
とはいえ、正直、具象と抽象との線引きは難しい。作者があるモチーフを咀嚼し、デフォルメした時点で抽象性を帯びてくるため、具象から抽象へのグラデーションは個々に異なるためだ。またキャンバスに描かれる絵画とは異なり、これも材料や工程の関係から工芸品は写実的な描写がしづらく、具象が向かないという点もはらんでいる。こうした理由から工芸品は独自の抽象模様が発展し、それは様式美や抽象美となって、いまに生き続けているのである。

御絵図(部分)(琉球王国時代 19世紀)、日本民藝館蔵

スリップウェア皿、イギリス(18~19世紀)、4.2×18.2cm、日本民藝館蔵

タパ(部分)、ポリネシア、ハワイ、樹皮・染料(18世紀後半~19世紀前半)、日本民藝館蔵
鑑賞日:2026/02/01(日)