劇場公開日:2026/03/06
会場:新宿バルト9ほか[全国]
原作・脚本・監督:四宮義俊
制作会社:スタジオアウトリガー、Miyu Productions
配給:アスミック・エース
公式サイト:https://hanaroku.asmik-ace.co.jp/
風景に宿る光の揺らぎや、建築や道具に描写された豊かな質感。『
同作のストーリーは端的にまとめるならば、宗田理『ぼくらの七日間戦争』(1985)に代表されるようなミニマルな政治劇という枠組みを使い、子供と大人の中間にある幼馴染の男女3人の関係性と、その成長を描いたものだと言える。舞台となるのは町の再開発で立ち退きを迫られる老舗花火工場・帯刀煙火店。そこで育った敬太郎は、蒸発した父が構想を語っていた幻の花火「シュハリ」の完成にひとり取り組んでいる。夏の終わり、幼なじみのカオルは、敬太郎の兄で市役所勤めの千太郎(チッチ)から、立ち退きの行政代執行が翌日に迫っていることを知らされる。再会した3人は行政に抵抗しつつ、シュハリの打ち上げを試みるというのが作品の筋書きである。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
政治的な抵抗が物語の基底にあることは確かであるが、立ち退きはすでに決定事項であるため変わらない。なのでむしろ、それに対するメインキャラクター3人の異なるスタンスと葛藤が作品の中心的主題となっていると言えるだろう。父の蒸発以降も花火にこだわり続ける敬太郎、東京の美術大学でプロジェクションマッピングを学び、過去を振り切り前進しようとするカオル★1、実家の取り壊しを市役所職員として進めなければならないジレンマを抱えるチッチ。しかし、3人とも幼い頃から過ごした家、つまり帯刀煙火店に対する愛着は同様である。当初は花火の打ち上げに反対していたチッチであるが、カオルも含め改めて3人がその思いを再認識する次の場面は、その映画的な演出も相まって『花緑青』の感情的な盛り上がりを支えている。
物語の中盤、チッチは敬太郎とカオルの画策を知り感情をあらわにする。そのとき、はねのけられたリモコンが床に落ち、プロジェクターのスイッチが入る。するとたまたまスクリーンの前に立っていた敬太郎の背景に、在りし日の思い出がスライドショーとなって映し出される。その姿は、過去にとらわれている彼の内面を象徴している。しかし、投影される画像は3人の共通の記憶でもある。それぞれが正直に胸の内を言葉にし、その後3人は揃ってスクリーンのスライドショーを見つめ、花火や帯刀煙火店への思いを共有することで歩調を揃えていくのだ。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
こうした実写映画では作為的に見えかねない演出を持ち込むことに成功しているのは、同作がアニメーションだからというだけでは説明できないだろう。物語の舞台となる帯刀煙火店は、超法規的に増築された建築として描かれている。作中冒頭でも、ベランダから見える眺望や地上との高低差を利用したアクションシーンを通じて、この家の特徴的外観はすでに提示されている。内部も歴史ある煙火店らしく、さまざまな花火の材料や工具、機械があり、それらが住居と一体化している。こうした雑多な空間であるからこそ、この家では物と物が連関し、出来事を起こすのだ。
(後編へ)
★1──映画『花緑青が明ける日に』X公式アカウントより。
https://x.com/hanaroku_movie/status/2008372954128580983
鑑賞日:2026/02/12(木)