第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示の帰国展が京都市京セラ美術館の桜水館で1月24日から3月1日まで開催されていました。私は最終日に滑り込みました。

まず、会場になっている京都市京セラ美術館の桜水館ですが、そんな名前の建物あったっけ? 行ってみて、びっくり。

京都市京セラ美術館 桜水館の外観

本館と同じスタイルの2階建て(地下1階もあるそうです)の小さな館が裏の日本庭園の脇にありました。いままでまったくその存在に気がついていませんでした。足場が組んであって、ただいま改装中。

調べてみたところ、建てられたのは本館と同じ1933年。2020年の本館リニューアルオープンまでは、事務所棟として使われていたそうです。その際に美術館レストランとして生まれ変わるはずが、コロナ禍により運営事業者は資金難になり、開業させることができなかったらしい。今後、レストランではなく新たな文化施設となるそうです。本館は戦後、GHQに接収されていましたが(「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」の田中功起の展示にくわしい)、その頃ここでも一度だけ展覧会が行なわれた記録があるそうです。いったいどんな展示だったのでしょう。今回の展覧会はそれ以来のものになります。

ヴェネチア・ビエンナーレ日本館といえば、吉阪隆正設計のピロティと展示室の真ん中にある意味不明な「穴」の存在が有名です。どんなアーティスト、キュレーターであろうと、吉阪隆正からのこの「穴」という問いにぶつかる。今回のキュレーターの青木淳さんは、日本館の「フィクショナルな改修」で応答(キュレトリアル・アドバイザーは家村珠代さん)。その帰国展は、普通のホワイトキューブではなく、目下、実際に改修中であり、異なる歴史をもった桜水館で開催されました(青木さんは本美術館の館長でもあります)。

展覧会では、日本館のなかの「穴」「柱」「壁」「煉瓦テラス」「イチイ(樹木)」「動線リング」「階段庇」といった建築のエレメントが生成AIによっておしゃべりするストーリーがつくられました。主人公はもちろん「穴」です。2階では、藤倉麻子+大村高広による、そのエレメントが人間も含んで対等に会話するような映像インスタレーションが展開しています。桜水館には穴はないけれど、1階と2階をつなぐ階段が中央にある。まったく異なる環境の異なる建築だけれど、環境が串刺しになっているような感覚を得られるのは、1階で展示されているSUNAKI(木内俊克&砂山太一)による、ヴェネチアから京都へ並行移動した斜めの動線リングや床に斜めに突き刺さったiPhoneのせいもあるでしょう。ヴェネチアでの展示については、本橋仁さんによるレポートをぜひご参照ください。

SUNAKI(木内俊克&砂山太一)による展示

SUNAKI(木内俊克&砂山太一)による展示

藤倉麻子+大村高広による展示

タイトルは「中立点|In-Between」。分断の時代にあって、異なるものがそれぞれ異なるままに対等に存在すること。あれ、このテーマ最近見たなと思ったら、水戸芸術館の「磯崎新:群島としての建築」展でした。磯崎さんの伝説の展覧会「間」展も想起させます。青木さんは磯崎新アトリエ出身でした。

今年は「分断の時代におけるアーキペラゴ(群島)」を頭の端に置いて、いろんなものを見ていきたいと思います。(f)