[ドイツ、フランクフルト]

フランクフルトはよく通過点として使うが、今回はここを拠点にドイツの南部をまわった。到着した後、夕方、市庁舎と広場を経由し、大聖堂に入ると、夜のコンサートのリハーサルに遭遇する。一瞬、録音された音楽を流しているのかと思うくらい、6人の女声グループ、Sjaella(シャエラ)の完璧なハーモニーが堂内を満たす。古楽やアルヴォ・ペルトなどの曲が歌われ、大聖堂という特殊な建築空間ならではの音響効果を体験することができた。

 

大聖堂のSjaella

久しぶりにマイン川沿いに並ぶ博物館群をめぐったが、これらはほとんどリノベーションされた建築である。週末は前面の通りにバザールが出現し、歩行者天国として賑わう。グスタフ・パイヒルらによる増改築を重ねた《シュテーデル美術館》は、中世から現代まで充実のコレクションを誇る。また中庭はマウンドのように盛り上がり、その地下に大きな展示室を抱えるが、地上ではウーゴ・ロンディノーネのインスタレーションを設置していた。

 

《シュテーデル美術館》

ギュンター・ベーニッシュが手がけた《フランクフルト逓信博物館》(1990)は、やや子ども向けの空間であり、地下の常設では昔筆者が使ったMacも展示されていて、懐かしい気分になる。マティアス・ウンガースによる入れ子の空間構成で知られる《ドイツ建築博物館》(1984)は、改装中のため、再訪できなかった。隣接する《ドイツ映画博物館》は、1984年にヘルゲ・ボフィンガーがリノベーションした室内が大幅に変更され、別物になっていた。カメラ・オブスキュラの空間展示は、見事に対岸の風景が詳細に投影され、感銘を受ける。同じ通りの《世界文化博物館》と同様、歴史的な大邸宅を改造した博物館は、二度目のリノベーションを迎えているわけだ。リチャード・マイヤーによる《応用工芸博物館》(1985)は、古典建築の邸宅群と調和するように、複雑な形態操作を試みており、改めて力作だと感心させられる。常設展では、ブラウン社のデザインに貢献したディーター・ラムスと妻インゲボルグの仕事を紹介していた。またリチャード・マイヤーの名前を冠した、眺めが良い部屋もつくられており、彼が影響を受けた書籍や音楽、デザインなどを展示している。

 

《フランフルト逓信博物館》

《ドイツ建築建築博物館》、左奥が《ドイツ映画博物館》

対岸の風景が見えるカメラ・オブスキュラ

《応用工芸博物館》

橋を渡って、ハンス・ホラインのポストモダン建築、《フランクフルト近代美術館》(1991)に立ち寄るが、これも改装で、内部に入ることができなかった。ヨーゼフ・パウル・クライフスによる《考古学博物館》(1988)は、戦争によって屋根が壊れたカルメル会修道院に対し、現代的なデザインを接ぎ木している。回廊もガラスを嵌めて、室内化された。かつて教会だった大空間では、ちょうど古代の楽器演奏のタイミングに立ち会う。ちなみに、ナチスの強制収容所も考古学的な発掘の対象になっており、エントランスのエリアで展示されていた。

考古博物館の天井

鑑賞日:2024/03/15(金)、16(土)