「多目的空間」。読んで字のごとく、美術作品専用の空間である美術館や画廊と異なり、必ずしも狭義の美術には当てはまらない作品発表や活動が可能な展示スペースのこと。美術史的には、1969年及び70年にマンハッタンのグリーン街98番地と112番地に登場した非営利目的の小ホールが最初の「オルタナティヴ・スペース」とみなされている。当時まだ黎明期だったインスタレーションやパフォーマンスは、主にこうした空間を中心に発展し、またその展開に付随して各国でも同様のスペースが次々に誕生、カナダでは「パラレル・ギャラリー」とも呼ばれた。その意味では「オルタナティヴ・スペース」とは70年代美術の時勢と同調した空間であり、後により組織化された空間へと変質していったのは当然の帰結と言えよう。なお日本でも、「オルタナティヴ・スペース」は80年代以降活発に展開されるのだが、「ラフォーレ」や「スパイラル」など、民間企業が主導する施設が多いことに特徴がある。
(暮沢剛巳)
|