一般的に設置することを意味する普通名詞であるが、70年代以降、「絵画」や「彫刻」といった指示句では一括できない作品を指示する際に、多く用いられるようになった用語である。
この言葉の出現の経緯は、R・モリスにより提示された、インティメイトとパブリックの問題まで遡るべきであろう。要は作品の成立において、それが作品の内的な関係によってなされるのか、作品と作品を取り巻く外的な要因との相互の関係によってなされるのかという問題である。こうした議論は一方で、M・フリードの「芸術と客体性」においてモリスをはじめとするミニマリズムへの批判として議論がなされ、問題を提示している。当然のことながらこうした議論はミニマリズム以降のアースワークやポスト・ミニマリズムにおいても重要な問題として機能した。特にこの時期より活発化した、作品とサイト・スペシフィシティーとの関係といった議論に沿って制作される作品群を語る過程で、ジャーナリストが事後的にインスタレーションという用語を使用し始めたものと考えられている。しかし一方で、インスタレーションという用語はある特定の場所に対して作品を設置することについての議論を何らかのかたちで代理するが、この議論のなかでの「場所」もしくは「作品」への解釈が一定しないために結果として現在、非常に広範にかつ曖昧なかたちでしか使用されておらず、多くの場合、議論の中心となった問題への関心を欠いたかたちでこの用語だけがただ流通しているという側面が強い。
(森大志郎)
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