ギリシャ語の「自己」(auto)と「制作」(poiesis)とを組み合わせた造語。1973年、チリの神経生理学者マトゥラーナ+ヴァレラによって初めて提唱された。生命システムが「有機構成」(organization)によって規定される機械であるという大前提のもと、この機械の特徴として「自律性」「個体性」「境界の自己決定性」「入出力の不在」といった諸点を指摘している。そもそもは生命体の生成プロセスを解明するために提唱された生命科学に由来する概念だが、N・ルーマンはその可能性を社会システム分析にまで敷衍してみせ、また近年では、既存の社会システムとの比較によってオートポイエーシスの独自性を明らかに使用とする議論が展開されるようになっている。現代美術の領域においても、オートポイエーシス理論が示した諸々の特徴はサイバースペースにおける表現の可能性に対応するものと考えられ、ネットアートにおけるさまざまな実験を通じたその検証が期待されている。
(暮沢剛巳)
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