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ボディ・アート Body Art


「ボディ・アート」とは、木や石、またはキャンヴァスに油彩といった伝統的な素材に代わり、アーティストの身体そのものを素材として使う美術のことをいい、1960年代末から70年代、主にアメリカ、ヨーロッパのアーティストによって発表された。これは、コンセプチュアル・アートの一派であると同時に、パフォーマンス・アートの先駆とも考えられており、公的あるいは私的なパフォーマンスとして展開された後、記録(ドキュメンテーション)として、写真やヴィデオによって鑑賞される場合が多い。ボディ・アートは自虐的、心霊的な発想を契機とすることが多く、きわめて多様な展開を見せた。例を挙げると、自分自身に向けて発砲したクリス・バーデン、カミソリの刃で自分自身の身体にこまかな傷を刻んで模様を作った、ジーナ・パーネなどである。ボディ・アートは、20世紀初頭のダダのアーティスト、マルセル・デュシャンが発表したいくつかの身体的表現(例えば頭髪を星形に刈る行為など)や、1960年代初頭にイヴ・クラインやピエロ・マンゾーニらが繰り広げた一連のアクションなどが原型として挙げられるが、身体性を第一義とするこの時代特有の、ある種の騒乱を内側に取り込んだものであったと言える。セックスやドラッグ、そして性心理の解放などにまつわる社会全体の実験的な試みを、ボディ・アートは照射しつつ、具現したのである。

(中島律子)

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