1910年代、ロシアの構成主義芸術家V・タトリンが制作した一連の壁面彫刻作品のこと。タトリンは、そもそも構成主義を創出した人物のひとりとされるが、その具体的な現われがこのコーナー・レリーフである。タトリンは、13年にパリでピカソのアサンブラージュ作品に衝撃を受け、モスクワでレリーフ作品を作り始めた。具体的には、工業用の金属板や丸棒、針金を組み合わせて部屋の角に取り付けたもので、美術史上に現われた最初の純粋抽象彫刻と言うことができる。また、それまでの彫刻作品のように実体的量塊として存在するのではなく、部屋の角の凹空間そのものを作品化する彫刻であり、この点で彫刻史上革命的な転換を行なった作品でもある。タトリンはこの作品を「現実空間」に存在する「反レリーフ」とも称した。このような、現実の場所を取り込んで作品化する方法論は、70年代から注目されたインスタレーションの技法にまで影響を及ぼしている。
(苅谷洋介 )
関連URL
●ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
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