1950年代にアメリカでスカンジナヴィア・デザインの受容とともに、工芸の伝統を自然な仕上がりに生かそうとする動きが始まった。これはインターナショナル・スタイルへの反発であり、1930年代のバウハウス出身の工芸家たちによる伝統工芸への回帰ともみられる。イギリスではアーツ・アンド・クラフツ運動の流れを汲む陶芸家バーナード・リーチらが人里離れた場所で技術に磨きをかける生き方の実践をし、1970年代の若い工芸家の憧れとなった。この動きはデザイナー=メーカーの勃興を呼び起こしたのだが、この時期、工芸は世界的にも再考を促されていた。イギリスの「工芸とデザインの新精神」展(1987)を転機に、デザインも制作もひとりでこなす若手たち、たとえばロン・アラッドやトム・ディクソンといった廃品を利用した家具などを生み出すデザイナーが登場し、工芸の役割と新しい考え方の融合を促し、工芸自体の問い直しが行なわれたのである。1990年代に入っても、従来の工芸品の枠を超える作品が生み出され、新しい価値をもった製品の考え方を提出している。
(紫牟田伸子)
関連URL
●ロン・アラッド http://www.japandesign.ne.jp/HTM/SEMINAR/000105/arad-report.html
●トム・ディクソン http://www.designboom.com/eng/interview/dixon.html
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