1839年、フランスのL=J=M・ダゲールが開発・実用化した銀板写真法。撮影制作の写真法に用いられるレンズ付暗箱型カメラを指して言う場合もある。手順としては、1−銀メッキした銅板(銀層板)を磨く。2−感光化するために沃素(ようそ)に浸す。浸された銀は、感光物質の沃化銀となる、3−撮影する。4−水銀蒸気で現像。5−ハイポ(チオ硫酸ナトリウム溶液)で定着、というプロセスで進行する。シャープで奥行きの深い諧調表現はニエプスの写真術から格段の進歩を遂げたものであり、またその技法が特にポートレート写真の撮影に適していたため、短期間のうちに欧米に普及、写真史上初めて大々的な成功を収めた技法として、ダゲールの名は広く知られるところとなった。1848年には、早くも日本にも紹介されている。ただし、高コストで複製不可能、また保存に適さないなどの物理的制約が多かったため一定数以上には普及せず、1850年代以降は複製可能なカロタイプなどの技法にとって代わられていった。
(暮沢剛巳)
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