fabricatedとは「人造」や「再構成」を意味する英語であり、そのため「ファブリケイテッド・フォトグラフィ」といえば、贋作や模造が連想されがちである。しかし、そもそもが複製芸術である写真にとって、贋作や模造を問うことはあまり意味がない。実際のところ、「ファブリケイテッド・フォトグラフィ」(別に「セットアップ・フォトグラフィ」や「ステイジド・フォトグラフィ」とも言う)とは、撮影のためだけに作られたセットを被写体とする写真作品の総称であり、精巧な人形とミニチュア家具を製作したり、廃墟に見立てたセットを撮影など、その作風やイメージはきわめて多岐にわたる。1970年代後半以降に登場してきた比較的新しい動向だが、その最も代表的な作家として名を挙げるべきなのがC・シャーマンであろう。仮装した自分自身を被写体とするシャーマンの作品は、年を追うごとにその表現の強度を強めており、またそこに表象される女性性は、フェミニズムの観点からも多くの議論を呼んでいる。
(暮沢剛巳)
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