額縁。タブローや水彩画、版画、素描といった絵画の画面内空間を、物理的三次元空間から質的に差異化するために施される枠。もちろん、両者の調和も重要であり、結果、フレームは絵画の収められた建築(空間)の様式と密接な関係をもち、その変遷を共にしてきた。だが、近現代において、絵画がニュートラルな空間を前提とする美術館に収められ、一方で絵画に限らず芸術の諸ジャンルが自己言及的な性格を強めていくなかで、フレームのあり方もまた俎上に載せられることとなった。その端緒は近代の画家にすでに認められる。例えば、画面空間そのものを網膜上の感覚刺激の等価物とした点描主義の画家たちは、空間の質的差異を作り出す装置であったフレームを画面空間と同様に彩色した。このことは、フレームの機能/効果を無効とし、画面空間もその外部空間と同様に知覚されうることを改めて示そうとした試みであったと考えられきわめて興味深い。現代においてはフレームそのものがなくなってしまうことが多い。その代表的作家であるF・ステラのシェイプト・キャンヴァスは、画面空間が自律化した結果、画面がフレームから解放されたものとして捉えることができる。
(保坂健二朗)
|