「こする(frotter)」から。木や石などの凹凸面に紙を置いて上から鉛筆などでこすり、偶然的なイメージや図柄を紙面に写し取る技法。1925年シュルレアリスムの中心的芸術家のM・エルンストが創出(《葉の習作》1925)、翌年フロッタージュによる作品集『博物誌』が刊行される。無意識の解放を唱えるシュルレアリスムのオートマティズムを造形芸術に適用した技法のひとつ。後にあらかじめ混色した油絵具を凹凸面に塗り付けて一部を掻きとるグラッタージュという方法で油彩画にも応用される。紙の下の素材が画家の想像力を刺激し無意識下のイメージを触発、偶然的に紙面に表象されると考えられた。デッサンや彩色という絵画制作の理性的、意識的作業から芸術家を解放し、潜在意識を直接的に造形化できる技法として重視される。J・フォートリエやH・ミショーなどに見られる油彩やコンテによる利用のほか、現代美術では多様な素材を使った応用例が見られる。
(陳岡めぐみ)
関連URL
●M・エルンスト http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-ernst.html
●J・フォートリエ http://perso.club-internet.fr/ledeurjp/Fautrier.htm
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