広島県北東部に位置する吉舎、三良坂、総領の3町にまたがる洪水調整ダム(灰塚ダム)の建設を契機に、1994年これら3町が協同して立ち上げたプロジェクトで、ダム周辺地区の整備と地域の文化振興を、アートを仲立ちに推進することを目指したもの。ダム周辺の景観形成にアースワーク的手法を導入し、過疎のイメージの強いダム地域を逆に芸術の発信源として捉え、公共事業とアートの新しい関わり方を模索している。夏期にはワークショップ、シンポジウム、国内外のアーティストを招いたアーティスト・イン・レジデンスや、学生向けのセミナー・実習を行なうアートキャンプ、民家を利用し、地域全体に展示空間を拡張した展覧会「アートスフィア」などを実施。地域内での芸術教育・普及活動だけにとどまらない発信性の高い企画で、地域の文化的アイデンティティを確立することを目指す。相談役に岡崎乾二郎、建築家吉松秀樹を迎えて、一過性の「まちづくり」や「パブリック・アート」とは一線を画す活動を行なっている。
(宮川暁子)
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