再現的なものと抽象的なもののどちらにも落ち着くことのできない再現表象=リプリゼンテーションのこと。この語をつくり出したクレメント・グリーンバーグによると、それは、「抽象的な目的のために適用されるのだが再現的な目的をも示唆し続けるような、彫塑的かつ描写的な絵画的なるもののこと」を意味する(「抽象表現主義以後」、川田都樹子+藤枝晃雄訳、『グリーンバーグ批評撰集』所収)。また分析的キュビスムが到達した、「[再現の]対象自体を消し去ること、つまり対象がその中に存在しうる類の空間のイリュージョンだけを、かつては対象を覆っていたその表面のより弱いイリュージョン──分割面──とともに残すこと」(同)も、ホームレス・リプリゼンテーションと言われる。この点では、なにか具体的な対象が再現されそうな気配があっても、そのなにかがいつも欠落しているという意味で、「落ち着き場のない」と言っているようでもある。グリーンバーグによると、この徹底して中途半端な再現表象それ自体に別に問題はない。そのように「再現性をもてあそぶこと」が、抽象表現主義に「最良の成果」をもたらしたときもあった。けれどもそのあと、1950年代のウィレム・デ=クーニングやフィリップ・ガストンによって、このホームレス・リプリゼンテーションはマンネリズムに堕したとグリーンバーグは言う。この「現実の結果」から、彼はホームレス・リプリゼンテーションを非難する。
(林卓行)
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