記号とその対象が「物理的に」結びつくような記号のこと。「指標(記号)」と訳される。例えば地面に残された靴の跡は、そこに人が訪れたことを示すインデックス=指標記号である。これはチャールズ・
S・パースが、記号をその対象とどのような関わりをもつかという観点から三つに分類したもののうちのひとつで、ほかに「類似(記号) icon」、「象徴(記号)
symbol」がある。インデックスという概念は、特に写真について考えるとき重要になる。写真とは、対象=被写体に反射した光を、感光乳剤がその化学的な変化として記録したものである。つまりある写真は被写体となったものの物理的な「痕跡」であり、ここに映像としての写真の特異性がある(例えばどれほど克明に描かれた絵画も、その実物と「類似する」ことができるにすぎない)。さらにロザリンド・クラウスは、おもに1970年代の美術を例にとりながら、この写真やそのほかインデックス的な記号を美術作品に導入する効果について論じている。彼女によれば、それ自体は空虚な記号でしかなく、その対象の「現前」によってはじめて意味を発動するインデックス(「転換子(shifter)」
もここに含まれる)は、作品にうむを言わさない「現前性(presence)」を付与するものである(「指標論 パート I / II」「 Note
on Index: Part I / II」)。
(林卓行)
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