1968年、ニューヨーク近代美術館で開催。キュレーターはユージン・C・グーセン。出品作家はまずジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマンら抽象表現主義の「大家」。そしてエルスワース・ケリーやケネス・ノランド、モーリス・ルイスといったポスト・ペインタリー・アブストラクションの画家。さらにフランク・ステラやドナルド・ジャッド、ロバート・モリスなどミニマル・アートの作家、そしてこれらアメリカ芸術のルーツとしてのジョージア・オキーフ、というように、ネオ・ダダやポップを除く、当時のアメリカ芸術のほとんどオールスター・キャストとなっている。グーセンはこれらの作家の作品を「現実=リアル」によって束ねようとするのだが、そのとき彼が強調して止まないのは、この「リアル」がけっして観念的なものではないということだ。そこで、ヘーゲルやマレヴィッチが、あるいはイリュージョンを駆使してさまざまな観念を伝えようとするルネサンスの画家が、古い芸術のモードとして扱われることになる。一方でアメリカの芸術家たちは、あらたに作品それ自体の「リアル」をめざすというわけだ。グーセンのこの論理は、アメリカの芸術は「リアル」を旗印にヨーロッパに対して優位に立とうとしたのだと見る、つまり「リアル」の政治性を言う論者に、格好の言質を与えている。
(林卓行)
関連URL
●ニューヨーク近代美術館 http://www.moma.org/
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